『荒川の佐吉』は所謂 歌舞伎では珍しい やくざ物ですが、
猿翁旦那も割と数多く 何回か上演されております。

その他にも、勘三郎さんや仁左衛門さんも 得意とされている演目。

このやくざ物の歌舞伎 どれだけあるでしょうか?


もっとも本来は書き物的なもので、歌舞伎とは云えないかも知れませんが、
猿翁旦那のお言葉をお借りするなら、歌舞伎役者が演ずれば 
それはミュージカルであろうがコメディであろうが すべて歌舞伎である・・と。


ですから一応 歌舞伎と云うジャンルの中で『荒川の佐吉』以外で
思い浮かびますのが、『瞼の母』『一本刀土俵入り』等 
歌舞伎座でも多く上演されております。


もう少し 範囲を広げて考えてみますと 
やくざ物と申しますと、昔の東映時代劇の様なものを思い浮かべてしまいます。
義理人情を描いた侠客物。『鯉名の銀平』『次郎長三国志』などなど。

そこから発展した高倉健さんあたりの『昭和残侠伝』の様な任侠ものなど。
さすがにこの時代の、やくざ物は歌舞伎では上演されませんが・・・(笑)

『鯉名の銀平』は、長谷川一夫さん 大川橋蔵さんなども数多く 
劇場で上演されておられます。



ここで面白いのが、歌舞伎で登場するやくざ物は『荒川の佐吉』『瞼の母』
『一本刀土俵入り』に見られます 人情やくざ物。

つまり一宿一飯の義理  切った張った!と云う部分より 人間的な優しさ 
止むにやまれない気持ちでの「人情」がテーマになって居る事です。


ですから『荒川の佐吉』も 最後に長脇差(刀)を持っての立ち回りと
なりますが、親分の事を思う人情! 子の事を思う人情。

『瞼の母』や『一本刀土俵入り』もこう云った人情がテーマです。

一般的に考えられているような いわゆる「やくざもの」とは 少し
視点が違っているように思えるかもしれません。


歌舞伎でちょっと 変わり種やくざ物をあげるなら、村上元三さんの作品で
『ひとり狼』と云うのがございます。

1966年4月大阪新歌舞伎座で松本白鸚さんが勤められた追分の伊三蔵。
私(14歳・・・笑)は、これに茶屋の小女で出演しておりました。

後年1988年10月歌舞伎座で吉右衛門さんが追分の伊三蔵を
勤められた折には 私は、復讐に燃える凶状持ちを勤めさせて頂きました。
これもご縁ですね(笑)


このお芝居は、江戸時代末期から明治にかけての時代背景で
追分の伊三蔵と云う 人斬り稼業のやくざ者のお話で、
大詰め 明治になってからは散切り頭で登場する珍しいやくざ物です。



もうひとつ珍しいのが中村富十郎さんが市村竹之丞時代、
1967年2月御園座で『次郎長三国志』を上演されており、
この時の小政がなんと 猿翁旦那でした(笑)

ただこれには女優さんたちも出て居られ 純然たる歌舞伎とは
云えないかも知れません 


女優さんと一緒と云う事であれば 市川右近さんが勤められた
2008年10月名鉄ホールと1010劇場での『極付・森の石松』

笑也さんや猿四郎さん 喜昇さん 笑三さん 喜猿さん 喜之助さん猿若さん 他
貴水博之さん 尾上紫さん 山内としおさんと云う珍しい座組。

これに私は 清水の次郎長役で出演させて頂きました。
懐かしいですね。(笑)

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私も若い!

おまけにもうひとつ この次2009年6月中日劇場におきましての
右近さん段治郎さん(月乃助さん)の弥次喜多『東海道中膝栗毛』では
私 清水の大政を勤めさせて頂きました。いろいろやっております(笑)

今日は歌舞伎のやくざ物 いろいろでした。(笑)