『元禄港歌』の大店、廻船問屋の筑前屋。

万次郎(高橋一生さん)と 歌春(鈴木杏さん)は 好きあっている男と女。

ですが、大店の次男坊と瞽女と云う身分の差で、当然 一緒になることは
できません 

ここでも《差》と云うものが 二人の仲を裂きます。



今日もネタバレ、ご注意ください



歌春もやはり、女。
日陰の身で居るよりは いつか世帯をと思い、
身分の低い職人の和吉(大石継太さん)の求めに応じて 
嫁になることを決意致します。


今の世の中では、考えられないかも知れませんが、
この時代 夫婦と云うものは男も、女も 真っ白な状態で
夫婦になることが通例でした。(一応・・・建前は・・笑)


そして、武士の場合 妻が三年以内に身ごもらなければ 
例え男性にその原因があっても 離縁してもよいという 
理不尽な掟が蔓延っておりました。


また武士たる男が 妻を寝取られると云う事は それだけでも
恥をかかされた事になり 妻と関係を持った男に対して
妻敵討ちと云う事をしないと 武家社会では生きて行けませんでした。

武士もそうであるように やはり町人の世界でも、それらの掟は
生きておりました。


万次郎と公に添い遂げられない歌春が、できる事なら
本当の世帯を持ちたいと 思った事は ごく自然な感情。

ですが、和吉に詰問され 正直に万次郎とのことを話してしまった歌春が 
かえって可哀想ですね。

万次郎は和吉に
「そんな事 女に問い詰めるのはアホな男のすることや!」と
云います。


万次郎は一見、チャランポランな若旦那ですが、
おそらく一本筋の通った人物であったことでしょう。

私の個人的な意見なのですが
(もしかしたら、正式な設定であるかもですが、ない前提で)
万次郎は、信助は本当の兄だと思っていたのではないかと。

出来の良すぎる兄にコンプレックスを抱いていたのでしょう。
アホな母親の言い分みたいですが、きっとやればできる子。
どこか、ワザとの部分があったのだと思います。

きっと、色々な事を考えて生きて来たでしょうね。
包み隠していた部分も多いと思います。
それゆえのチャランポラン


そんな万次郎、女性にかけては的を得てます(笑)
本当に 歌春が好きだったのでしょうね。

和吉は逆にそれが許せなった! 
どちらにも理があって悪い人は居りません

ですが歌春が 被害を受けてしまうのはやはり《差》でしょうか?

潔癖主義に近い和吉は 万次郎と歌春のことを知り 
ついに、狂気に走ります。

そして、そこに悲劇が・・・。

今日の写真は せっかく幸せをつかみかけたのに、するりと掌から
その幸せが抜け落ちた歌春役の 鈴木杏さんです。


イメージ 1



幕開きでは一番 不幸が襲って来ないように見える
陰中の陽を象徴する瞽女の歌春でしたのに・・・



ですが、実際に歌春は聞くことはないままでしたが、
万次郎がある意味初めて云った、和吉へのあの本音の台詞。

最後の最後に、居たい場所で果てる事ができたこと。
そして死後も、《差》を大きく超えた万次郎の言葉。

幸せと云ってはいけないのでしょうが、それでもどこか
よかったね、せめてもの事だね。。。と云ってあげたくなる
そんな、歌春です。

こんなにも愛した歌春を失った上に、
恐らく、越えられない存在だった兄をも失ってしまった
万次郎はこの後どうなるのでしょうね。。。