今日、急に頂いたお休みですので、自分のしたい事とは別に 歌舞伎座へ参りました。

昼の部の 右近さん 松也さん 七之助さん 児太郎さん 他の
『本朝二十四孝 十種香』と 
中車さん 門之助さん 児太郎さんの『赤い陣羽織』を 見て参りました。

その後は、少し用事がありましたので『関の扉』はまた後日に。 

ふたつとも、今月 いつかは見たいと思っていたのですが、
思いがけなく 早い時期に見られました。

今日はやはり日曜日 満員のお客様でした。

色々と書かせて頂きたい事は あるのですが、感想といたしましては
近い後日に 回させて頂きます。

ですが、児太郎さんの成長ぶりには驚きました。(笑)

ただ、お芝居の良い悪いは別にして、『本朝二十四孝 十種香』の
段だけですと お話しを知っている私でさえ 物足らなさを感じました。

ましてこのお芝居 初めてご覧になられた方は おそらく
なんのこっちゃい?(笑)状態でしょうね。

お話しを簡単に書きますと ご存知 長尾(上杉)謙信と武田信玄の戦い。

将軍が暗殺されたことにより、三年間の休戦を合意して、
信玄の子「勝頼」と謙信の娘「八重垣姫」を婚約させます。

ですがそれより以前 信玄は画策をなして 「勝頼」を「花作りの蓑作(みのさく)」
として すでに謙信館に送り込んでおりました。 

また 斎藤道三の娘「濡衣(ぬれぎぬ)」も 別に腰元ととして 
すでに謙信館に入り込んでいて、お互い 上杉家の家宝”諏訪法性の兜”を狙っておりました。


そうしたとき、ある事で勝頼(偽物)が切腹させられる羽目になり 
死んでしまいます(ただし偽物) 
その情報が謙信館に届いたところから この『十種香』が始ります。
(すいません 今回は簡略に・・。)

「八重垣姫」は婚約者でありながら 実の「勝頼」の顔を知りません

婚約者の「勝頼」がすっかり死んでしまったと思っている「八重垣姫」は
毎日 勝頼の絵姿に十種香(高価な十種類のお香を混ぜたもの)を
焚きながら菩提を弔い 泣きながら暮らしておりました。

また 謙信は「蓑作」が実は勝頼かも知れない?と 密かに疑いを抱いており
衣服大小を町人の花作り蓑作に与え 武士かどうか?
その姿を 陰ながら見ておりました。

「勝頼」は勝頼で 泣き崩れている「八重垣姫」に 名乗るに名乗れないところなのです。


その後 「濡衣」の手引きで 「蓑作」が実は「勝頼」だと 「八重垣姫」に教え
姫は喜びますが、その様子を見ていた謙信が「勝頼」だと確信して 
「蓑作(勝頼)」に 塩尻までの使いを申し付けます。

そして そのあとを追って始末するようにと 家来の白須賀六郎 原小文次に命じます。

それを知って 「濡衣」「八重垣姫」が驚くところで今月のこの『十種香』は
幕となりますが、やはり物語としては、この後の『奥庭・狐火』の段が
あった方が親切です。


蛇足ながら、急を知った八重垣姫はなんとか勝頼の後を追い
危急を知らせようと致しますが、女の足では所詮無理、
それに諏訪湖は、すでに氷が張って船が出せない。
 
そこで諏訪大明神に祈り 諏訪法性の兜の力を借り 狐が乗り移った姿にて 
後を追い 狐火の神通力にて氷が張った諏訪湖をわたり 
勝頼に急を知らせるという物語です。

ここまで上演されることも多く、その方がお話としては 分かりやすいことでしょう。


例によって『義経千本桜』同様 大序から四段目まである
長い義太夫狂言の四段目のその一部分の『十種香』

では今回なぜ、『奥庭・狐火』まで上演しないのかと申しますと、
ここまで上演しますと この演目は「八重垣姫」の出し物と
なってしまうのです。

今回は「長尾謙信」役の 右近さんの出し物。
ですから どうしてもここで幕となってしまう訳です。


以前にも申し上げました様に 歌舞伎には役者の格と云うものがございます。

もし玉三郎さんが八重垣姫でしたら ここで終わる事はありえません 
『奥庭・狐火』の段と続くはずです。

でも、そうなりますと昼の部の一番演目としては 上演できないのです。

ここに歌舞伎の序列の難しいところがございます。

簡単に書いたつもりですが、長々となりました事 お詫び申し上げます。

でも、これが私 本来のブログでしょうか?(笑) 


本来のお稽古のお休みの日に、本来ならなかなか表から見ることのできない芝居を
客席から見て、いろいろと書かせていただく。

新生歌舞伎座 公演日に客席から見せて頂いたのは 私 今日が初めてでしょうか? 

こんな一日もいいものですね。