先日、『口上』での女形、立役の姿の違いにて ブログを
書かせて頂きました。

今日、明日はお家によっての裃の衣裳の色 かつらの違いを書かせて頂きます。
まず今日は衣裳編。

今月の「四代目中村鴈治郎襲名口上」

坂東竹三郎さんが休演ですので、坂田藤十郎さん 片岡秀太郎さんの
お二人、これにおもだかやの市川中車さんが入られての口上で全九人。

坂田藤十郎さんはもともと 鴈治郎さんのお父上ですから、
別格と申してもよいでしょう。

このお三方が別の名字でして あとはすべて中村の名字です。

猿之助さんの襲名の時は、ほとんどが市川で 今回はほとんどが中村。
面白い現象ですね(笑)


さて、この九人の中で市川姓は、今回客演の中車さんだけですが、
中車さんは市川家の裃の色 これは「柿色」で、この色の裃を着られるのは
市川家だけです。

十八番ものの後見などもこの裃です。


同じように、これに対しましてそれぞれのお家にも各、色がございまして、
松嶋屋は緑色ですが、「松葉色」と申し、裃の間に茶のぼかしが入っております。

今回は片岡秀太郎さん

成駒家も緑色ですが、少し違う「革色」、と云ったように 各お家の色がございます。
今回は鴈治郎さんと 扇雀さん 壱太郎さんがこの色。

坂田藤十郎さんは、襲名の折に色を誂られ、「山城藤」と名付けられました。


江戸の成駒屋は、「芝翫茶」。梅玉さんは芝翫茶系の「お召茶」の梅だすきの裃。

東蔵さんは、「紫紺」ののし目。亀鶴さんが「藍鼠」。



裃ひとつにも、それぞれがお家の持ち味、持ち色?(笑)と
云うものがございます。

同じ中村でも中村屋の裃の色は薄い黄色で、これを「大和柿」と申します。


日本の色の文化と申しますのは 本当に素晴らしいモノ。

恐らくご覧になった方は それぞれの色のイメージがあって 名前とのイメージを
比べられることのできますでしょうし、ご覧になられない方にも
何となくわかるような 色の名前なのではないでしょうか?

日本の伝統色だけでも 何冊もの本が出ております。

普段言葉として使っている色、使ってない色、聞いただけでは想像とはちょっと違う色。

歌舞伎と申しますのは 260年に渡る江戸時代の 鎖国から生まれた外とは切り離された
独特の世界で生まれたものの一つと云ってもいいでしょう。

そして、日本の伝統の色は 同じく外とほぼ断絶しておりました 平安時代に
恐らく大きく発展したのだと思います。

皆様もご存知の十二単衣、ただ重ねて着るだけではなく 裏地の色味と表の色のあわせで
新しい「重ねの色目」と云うものも 楽しんだんだそうです。

季節に応じて、好みに応じて。

こんなものは おそらく日本でなければ 発展しなかった文化ではないでしょうか。



ちょっと話がそれてしまいましたが 今の歌舞伎界でも 家によりまして守っている色が
ございます。


明日はかつらに関しての、お家のお話を書かせて頂きます。