博多座の昼の部『曽根崎心中』夜の部『ぢいさんばあさん』
いずれも、お金の話が出て参ります。

以前の『ぢいさんばあさん』の時にも 書かせて頂いたかもしれませんが、
美濃部伊織が京に来て 寺町通りの刀屋から買った質流れの古刀。

値は130両。店の主が150両と云うところを20両負けさせた、
とございます。

伊織が何かの時のために、100両はいつも持っているが 後の30両の
才覚に困り 渋々下嶋甚右衛門から借りた、と あります。

江戸時代の前期と後期で、1両の貨幣価値も半分くらいにまで下がりますが、
前期の頃の価値で云うと 1両はおよそ10万円。

ですからこの100両、単純計算で今のお金に直しますと およそ、1000万円。

もちろん 当時の価格の変動を考えて だいたい3分の2くらいと
お考えくだされば よろしいでしょうか?

ですから、下嶋に借りた30両は およそ300万円。
価値が3分の2として、200万円。

そこまでして私、いくら名刀とは云え 1300万円で刀は買いません(笑)
中古なら 狭い部屋のマンションくらいなら買えますね(笑)



これに対して、『曽根崎心中』で平野屋徳兵衛が九平次に貸したつもりで
だまし取られた金子が、銀二貫目。

江戸の金本位制に対して 大坂は銀本位制ですので、1両と云う価値は
江戸と大坂で 少し違うのですが、この時の価値では およそ6万円くらいでしょうか?


1両は銀60匁。
銀1貫目は銀1000匁ですから銀2貫目は銀2000匁

単純計算で銀2貫目は33両。
(本当に大体の計算だと思ってくださいね)


先の『ぢいさんばあさん』の計算で行くと、『曽根崎心中』の九平次に
だまし取られた仕事の金は やはり200万円くらい?と云う事になります。


芝居の昼夜、江戸と大坂と離れておりますが、どうやら 今月のお芝居の中では
2人の主人公は 同じような感覚の借財で 人生を誤ってしまっております。

大きすぎる借金よりは この程度の「借りても何とかなる」と云う感覚の
金銭が 一番怖いのではないでしょうか・・・



今でも振り込め詐欺や、霊感商法などでこれくらいの金額を騙し取られている
被害者の方がいる訳ですから、世の中の悪は 時代の古さは関係ないようですね(笑)

皆様 このあたりのトラブルは 時代を問いません。
是非とも、詐欺にはくれぐれもご用心を・・・。

そして、一番大切なのは やはり「身の丈」にあった生活ではないかと思います(笑)


いずれにしても お芝居をご覧になられるとき だいたいの金額がお分りになれば
そのお話も面白くなるかと思います。

今日のブログは、2つのお芝居の中の お金の値打ちでした。