先日、コメント欄にこのようなご質問を頂きました。


「今月は四代目、中村鴈治郎様の襲名公演ですので、やはり【口上】が有りますが、
 2月の大阪松竹座では、門之助さんは、女形のお姿でご挨拶されておられ、あれ何故???と
 確か猿之助様の襲名口上では、男姿でいらっしゃいましたよね。

 いろんな仕来りが有るのかな~? とは思っていたのですが、お答えをお願いします。」



と云う内容のご質問です。よい機会ですので、このご説明をさせて頂きます。

ただ、かなり事情も複雑でございますので、その辺のところもお含みおきください。


このご質問の猿之助様の襲名口上の時の門之助さんと云うのは、
新橋演舞場を皮切りに何回かございますが、

2014年の6月9月の巡業公演での 口上を例にとりましてお答えさせて頂きます。


この時の6月は、この口上の後の演目が、『一本刀土俵入り』で門之助さんは、
船印彫師、辰三郎のお役でした。

9月の時は、口上の前の演目が『小栗栖の長兵衛』で、おいねの娘婿 七之助のお役。
(夜の部では口上のあとの演目でした。)

今年、2月の松竹座の鴈治郎襲名口上の前の演目は『銘作左小刀(京人形)』で
門之助さんのお役は甚五郎の女房のおとく。所謂 女形です。

門之助さんの場合 口上の前後が、女形のために、その演目の印象を損なわない様に
女形で登場されたのです。もちろん 逆に立役の場合は、口上姿も立役となります。

これは、兼ねる役者における必然性でして、口上の出番の前後のお役に
関連して参ります。

門之助さんの場合はこれに当たります。

当然、門之助さんだけではございません 
立役女形を兼ねる役者さんの場合は、口上の際 その前後の演目によって 
こう云った事がございます。


但し今月は、少しまた事情が違います。

坂東竹三郎さんが休演されましたので、口上に上がられている役者さんは9人で 
そのうち 女形姿は片岡秀太郎さんだけです。

(すいません 先日まで間違えて8人と 表示しておりましたが、9人の誤りです。
謹んで訂正させて頂きます。)

上方成駒屋の場合 兼ねる役者さんばかりですが、口上の時は立役姿で
舞台に立たれると云うのが仕来りなのだそうです。

『口上』の前後の幕間時間と出番で 時間があるのも理由となりますが、
今月の壱太郎さん

昼の部は『連獅子』の狂言師と後シテの子獅子で、立役ですが、
夜の部は『ぢいさんばあさん』で若夫婦の妻であり 『口上』をはさんで、
『芸道一代男』では娘役 おなみを勤めておられます。
ですが『口上』では、立役姿で舞台に上がられております。

他のお家では 前後に出て居られなくても、立役女形のバランスで、
扮装を変える事もございますし また お家の仕来り等 出番の事情等も 
考えられる場合もございますので その辺は何卒、ご寛容のご見物のほどを・・・(笑)

全く女形の扮装のない口上と云うのは あまりないのではないでしょうか?
このあたりは やはり 兼ねる役者がバランスをとることもございます。

申し訳ありません これでお答えになっていますでしょうか?

お家によっての仕来りもあれば、前後のお役の関係、またその時の並びの関係もございます。
その時の事情に応じて 口上の姿を変える場合も あると云う事です。

皆様はこれを不可思議に思われても 仕方がないでしょうね。(笑)