昨日の続きとなりますが、『祇園祭礼信仰記』序段 二段目 三段目は、
お芝居の面白さと云うよりは、何か四段目の「金閣寺」へ続くための
プロローグのような書かれ方です。

各場面にはそれなりの見せ場もあるのでしょうが、それにしてもあまりにも
長いプロローグの様なので 段々と上演されない様になり
現在も戦後では一度も上演されて居りません

どの様なお話しかと申しますと かなり入り組んでいて ご説明しても却って
分かりにくいかも知れませんが 少しかいつまんでご紹介します。

松永大膳 以前は小田春永の家来でした。
しかし十三代将軍に仕え、主人である 足利義輝をそそのかし
遊女を与えたりする行動に 春永は困惑。

色々と諌める手段を講じますが、大膳には下心がありました。



御所を遊郭のような造りに変え 遊女花橘を引き入れて遊び呆ける義輝。

大膳は大芝居を画策致します。


義輝と遊女花橘は恋仲。そこに恋敵の三好存保(ありやす)と云う人が出てまいります。
いわば、花橘に横恋慕している 今風に申しますと、ストーカー。 

このあたりを簡単に説明しようとしても、長くなるのですが・・・
訳ありまして、義輝と花橘は 会うことが出来ない様になってしまいます。

そこに大膳は、義輝には「花橘とこっそり会わせてあげましょう」と場所を設定し、
対する花橘には、「きっと存保が忍んでくるから、気を付けなさい」と鉄砲を渡します。


忍んでくる男は、嫌いな存保と思い込んでいる花橘は 愛する義輝を鉄砲にて 討ち殺してしまいます。
思いがけない事に 花橘はその場で自害。 


そして大膳は、義輝の母慶寿院とそれに仕える「雪姫」と恋人「狩野之助直信」を連れ出し 
本心を明らかにして天下を取ると云って 春永に対抗 金閣寺へ立て籠もるのです。


四方を小田春永の軍勢に取り囲まれ 此下東吉もその一人として 待機しておりました。

さてここからが いよいよ、「金閣寺」に関わってくるお話になってまいります。

どんなことをして、大膳が金閣寺に立て籠もっているのかが 少しはお分かりいただけたでしょうか。


ちょっとだけまとめ。

金閣寺には将軍義輝を 策略を用いて亡き者とした「大膳」が 想う「雪姫」とその恋人「狩野之助」
を人質にして 立て籠もっております。


対するのは小田春永(=織田信長)とその家臣の此下東吉(=豊臣秀吉)


さて、ここからが 金閣寺。

策略には策略を持って・・・ではないのですが、

実は此下東吉は 策略として松永大膳に寝返るような形で、金閣寺に参ります。

「金閣寺」の幕が開く訳です。

これだけでも、なんだかわかったような わからないような物語でしょ?(笑)

でも、一体なぜ金閣寺にこう云う人たちがいるのか?
それが わかるだけでも 背景がわかりやすくなるのではないでしょうか???

一部だけを上演する作品と申しますのは 本当にそこに至るまでの背景はわかるようでわからない。

わかっていて当然と云う物語もございますが、逆にこの作品の様に わかってようがわかるまいが
とりあえず、ここからのお話をお楽しみください。と云った感じがするものもございます。


ま 要するに 逆に言えばこの芝居は今までの私の解説よりも「金閣寺」の
場面だけを単独にご覧になる方が わかるかな?と。 (何のための解説や!・・・笑)

ですが、やはり折角見るのですから、ちょっとした豆知識があったほうが より楽しめるのでは
ないかと思います。


ところで、この「松永大膳」のモデルとなっている人は 「松永弾正久秀」と云う人で、
大河ドラマなどでも 脇役としては一場面くらいには 登場いたしますが、
歴史的にはあまり メジャーな人ではありませんね。

でも大和の国の領主でもあり 信長と戦い信貴山の戦いでは居城で 討ち死にした
この地方ではそれなりに知られた人です。 


歌舞伎では、大敵の一人で「実悪」 「国崩し」と云われ座頭の勤めるお役となって居ります。


なぜ、このお芝居では こんなにメジャーではない人物が クローズアップされるように
なったのでしょうか??

これも大変気になるところです。