昨日のブログ 私の石蜘法印についてのお話。

このブログを普段から読んで頂いている方にも「誰?だれ?」と思われた方もおられ、
やっぱりなあ~と思ってしまいました。

ですが、コメントにも書かせて頂きましたが ここ最近では 時折、最初のせり上がりで 
「猿三郎!」の大向こうを頂くこともあり 嬉しい限りです。

毎日毎日 あんな風に心の中ではぼやいておりませんので・・・(笑)念のため。


念のためついでに、今日もネタバレあるかもですので ご注意を。




さて、その私の演じる石蜘法印によって 夫の死後に憤死し、
魂魄、宙に迷っていた辰夜叉御前が 再びこの土に呼び戻され 
左大臣高明と天下を奪おうと致しますこのお芝居。


『四天王楓江戸粧』ですが、口上でも猿之助さんが云われているように、
歌舞伎の中でも大スペクタクル巨編です。(笑)


18年ぶりの再演ですが、今度はいつ三演目があるかは まだまだ分かりません

作品的、と云うより 演出的にはそれだけ難しいお芝居なのです。

なにしろ序幕から宙乗りあり 立ち回りありのまるで大詰めのような
形からお芝居に入って参ります。


現在の映画やテレビなどでは どのようなシーンでも今ではCGが使われ 
大概のお客様は 驚かれなくなりました。

そりゃそうですよね。スクリーンには人間と恐竜も 同じ画面に出現すれば
また 宇宙への旅行も映画の中では あたかも現実かと錯覚するくらいの
映像が流れます。


現代の人々はスペクタクルになれている訳です。(笑)



過去の猿之助歌舞伎の復活狂言もそうですが この『四天王楓江戸粧』と云う作品は
およそ200年前 江戸時代に作られた作品ですから物語は多少 荒削りかもしれません

でも スペクタクルと云う事を知らない 江戸庶民が初めてこのお芝居を見たら
何と言ったでしょうね(笑)


私 石蜘法印が呪術によって 護摩壇に祈祷をしますと 宙から大蜘蛛が現れ、
五輪塔(お墓)の中へ 消え入ります。 そして私の気合い諸共 五輪塔が砕け散り 
辰夜叉御前が登場いたします。


お客様の目の前で この情景が演じられる訳ですから・・・。

そして岩が割れて 主役の登場 ですがこの主役 半ば骸骨です。 
これだけでも 江戸時代のお客様はびっくりでしょう!(笑) 

現代の皆様も?

CGはあくまでもCG。作りこまれたものです。
でも、作ってしまいますと、何度でも同じものを見ていただくことができます。同じものを。

ですが、この舞台と云うものは 皆様の目の前で 毎回同じものを できるだけ同じクオリティで
見ていただけるように 役者裏方、その他大勢の力を結集して 作っているものです。


そういう意味では、CGになれた現代の皆様にも、また違った意味で お楽しみいただけるのではないかと
思っております。



今日は猿之助さん 今回 三度の登場です。
ありがとうございます!

イメージ 1



石蜘法印が魂魄をこの土に呼び戻しました時は まだその魂だけが呼び返され 
肉体は死者のままです。 

そこで 再びの祈祷を致しますと 五体も復元され 
元のきれいな 辰夜叉御前となって現れます。

(それにしても 本当に私なんでもできますね・・・笑)

江戸時代のお客様は 骸骨からのこの変化にも大喜びでしょう!

ですが、きれいな辰夜叉御前は 劇場にてご覧ください(笑)



と 申しましても ただこの骸骨じみた辰夜叉御前だけでは 
猿之助さんに申し訳ありませんので 2幕に一瞬 登場します被布を着た辰夜叉御前を
代わりに掲載させて頂きます。(笑)


イメージ 2



この場面の辰夜叉御前は ただの女形の綺麗さだけではなく、
なにか ゾクッとするような 冷やかさを持った 雰囲気の猿之助さんです。


浅黄綸子の着物の上の被布にご注目を・・・。


紫の色合いに 銀の髑髏(しゃれこうべ)が描かれております。

しゃれこうべ とは 「晒(さら)され首(こうべ)」から変化した読み、で 
野晒しの事

昔の大罪人は首を斬られた後 その首を何日もさらし首として 
高台に置かれたままになります。

そして鳥や野犬などの餌食となり 肉は食いちぎられ 髑髏だけとなる訳です。


辰夜叉御前の被布には 死者から復活した表現が着物の柄に 現れております。

私 石蜘法印が供をして 一条戻橋の最後の場面に一瞬だけ現れるその姿。

スペクタクルとミステリーが 一対となっている見事な場面ですね。


この紫の被布 柄にもご注目を・・・・。