今日、楽屋に入りましたら その直後に 私の楽屋に 尾上右近さんが見えられ、
昨日のブログに関しましての お礼を言って頂きました。

大変恐縮してしまいました。
見て下さっているのですね、ありがたいことです。

聞きましたところ、大立ち回りどころか、立ち回りそのものが初めてとか。
これには 驚きました。
初めてとは とても思えない堂々とした姿ですね。



さて、今日のブログです。

今月の昼の部 最初の演目は、新歌舞伎十八番『高時』 

この演目は十八番(おはこ)と云う事ですから 市川家の狂言です。

演じておられるのは 一昨年の京都南座で勤められた 市川右近さん

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今回は二度目ですので もう手慣れたものです。



この作品 書かれたのは明治で、作者は河竹黙阿弥。

ちょうどこの頃 江戸時代の歌舞伎と別派の 新時代の歌舞伎を作ろうと 
模索していた時代の歌舞伎でして、西洋演劇が入ってきて 何か新しいものを
取り入れようとしておりました。

ですから二幕が開いた時に 主役の高時が 上手の柱にもたれて横向きの姿勢で
登場致します。


今の現代演劇では 主役は色んな状態で登場するのは 当たり前の世界ですが、
この当時 歌舞伎の主人公は花道から登場するか? 
またはせりから中央に登場するか舞台後ろから あいやしばらく などと 
声がかかって 登場 等々・・・。

歌舞伎とはそう云うものだ という 発想の多かった時代。

ですが、高時では 初の台詞が横向きでの台詞となっております。


これが新しいかどうか(笑)は 今では古臭いですが、演出そのものを
重んじた歌舞伎としては 大変珍しいやり方ではあった筈です。


で 主役が烏天狗に化かされて 一緒に踊り呆けるという 独特の舞。
これも 不思議な振り付けです。

ある意味 烏天狗の集団が主人公になっております。
                    
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烏天狗の二人 獅一さんと喜之助さんにモデルをお願いしました。

扮装すると私たちでも 誰が誰だかわかりませんね(笑)

この烏天狗の登場の仕方も ターザンのようにロープを伝って 上手 下手から
ぶら下がりながら飛んで来て 舞台に登場します。

このあたりも当時としては 独特の演出法だったのでしょうね。



高時は「北条家九代の連綿たる」と 申しております。

もちろん北条は 源頼朝が開いた鎌倉幕府を引き継いだ一族。

高時そのものは十四代目ですが、直系の、難しい言い方をいたしますと、
得宗家 という事では 初代から数えまして 「九代」と云うわけなのです。
これを当時の「九代目」市川團十郎に当てはめて 書かれた演目です。 

歴史をご存知の方は 一瞬あれ?と思われるのではないでしょうか?
そういうわけなのです。


歌舞伎の世界では 十五代目と云えば すぐに思い浮かぶのが 
名優 橘屋の市村羽左衛門さん  そして現 十五代目 片岡仁左衛門さん

さらに十七代 十八代と云えば 中村勘三郎さん 

それだけ名門と実力が続いている世界です。 
まだまだ 続いていくことでしょう



にもかかわらず歴史上の幕府や将軍は 北条だけにかかわらず 足利 徳川 等々
十五代も続くと慣れと腐敗が浸透して 崩壊して行くもなのでしょうかね?(笑)

ちょうど、高時は14代目。
舞台で見ていただきましてもわかりますように、遊興にふけっておりまして、
その崩壊も目の前。

政(まつりごと)というもの 烏天狗に化かされるのは 歌舞伎の世界だけにして
頂きたいものです。