大変長らくお待たせいたしました。

今夜は残っておりました『四天王楓江戸粧』四幕の解説に入りたいと思います。
ところで 三幕までのお話は 皆様 ご理解 頂けましたでしょうか?(笑)

ある意味、三幕で「蜘蛛」にまつわるお話は完結致しております。



ですが、さあ 四幕になりましてお話はガラッと変わります。  
全く別のお話し!(笑)

ところが、歌舞伎と云うのは不思議なもの。
つながっているようで つながってなく つながっていないようで
どこかで つながっているという 化かし合いのような演目が多々ございます。

どなたかがコメントに書いておられましたが、最後の幕はキツネにつままれたような・・・(笑)


はい その通りで ここで活躍するのはキツネです。でもその前に・・・。



四幕に登場致しますのが四天王の最後の一人、卜部末武(猿弥さん)ですが、
例によって主役ではありません(笑)

ちなみにこの末武の弟が 三幕で大活躍しておりました 團子さん演じる 鬼童丸こと卜部末明。

また、妹が三幕に出ておりました 春猿さん演じる女鯰。本名は卜部春町です。

何ともすごい三兄弟(笑)

三幕で説明したかったのですが、肝心の兄貴がまだ登場しておりませんでしたので、
後付けになりました。


さて、ここから盛大にネタバレが始まりますので
いつものように ご注意ください。





辰夜叉御前(猿之助さん)が滅んだあと、弟の高明(亀三郎さん)は逃走致し 
身を隠しております。

また源頼光(門之助さん)方は、末武に命じ、「藤原純友」と共に反乱に失敗した
「平将門」の嫡子で 父の無念を晴らそうとしている、
平良門(猿之助さん)を探しておりました。

(ここで、一番最初の「四天王楓江戸粧1」解説が 関係してくるのです。
 ?が飛んだ方は、もう一度 1 の解説を読んでくださいませ・笑)


この探索に、手を貸そうと申し出たのが、文売り女に身を替えた小女郎狐(猿之助さん)。


まずこの小女郎狐、代々伝わった「小狐丸」と云う名剣を探しております。


ここからが つながってないようで つながっている 歌舞伎の妙。

三幕の花山御所で、帝即位に際し必要なものは「十握の宝剣」
しかしこの宝剣は すでに盗まれておりまして 存在いたしません。
(「十握の宝剣」については 三幕までに解決しております)
偽物製作を試みます。

そのモデルとする為にある所から盗み出したのが、この小狐丸。

4幕は 同じ剣ですが、模倣を作る手本となった 小狐丸 という剣のお話。



余談ですが、猿翁十種のひとつ、『小鍛冶』と云う演目で、
三条小鍛冶宗近と、稲荷明神とで 打った刀がこの小狐丸です。


ちょこっとまとめ。
今度の主役の剣は 「十握の宝剣」ではなく「小狐丸」



高明一派に見切をつけて、行きがけの駄賃に、その小狐丸を持ち出した雷雲入道(欣弥さん)

地蔵堂で再び高明(亀三郎さん)の手に渡ります。

が、だんまりに於いて 小狐丸は、妖術を使う平良門(猿之助さん)の元に渡り、
七綾姫(尾上右近さん)の持つ平家の赤旗は、高明の手に渡ります。

だんまりの常ですが、持っているものが あっちいったり こっちいったり、
その為に だんまりがあると思ってください(笑)


だんまりで 各人の持つものが変わったのですが 今回の話はここでは終わりません。

最終的に 小狐丸を持つて悠々と幕外六法で、花道を入る良門(猿之助さん)


と、ここまでが、四幕一場の地蔵堂の場。



ここまでのまとめ!!

今度の話は 今までの純友一党の話ではなく、同じく反乱を起こした将門一党の話。

と、小狐丸 という剣を巡るお話です。


一場の最後に出て参りました 「あんた誰?」と云いたくなる人物こそが
平将門の息子の良門です(笑)

後からは、出てくるのですが、一瞬誰?ですよね(笑)



さあ、ここからさらにお話は、ややこしくなって参ります。(笑)


高明は、将門の娘の七綾姫(尾上右近さん)と、許婚同士です。
ですがお互いの顔を知りません

(このお芝居では 七綾姫は良門の妹にあたります。
 先月のお芝居は、一旦 忘れて下さい。・・・笑)

許婚とは知らずに いい仲の二人。

また、一方で高明は品川女郎のおのぶ(猿之助さん)ともいい仲。
世に男性は多いのに、なぜ一人の男に二人の女性が惚れるのか?(笑)

先月からの命題ですね(笑)


実は、おのぶが高明に近づくのには、訳がありました。


と、ここから、二場の紅葉ケ茶屋。



ここ紅葉ケ茶屋を借りているのは、町人に化けている卜部末武(猿弥さん)。

良門の詮議の為です。そして 良門は、船頭に化けてここへ来ます。

お互いが許婚とは知らない、高明(質屋のお客)と七綾姫(質屋の店の女)とは、
お互いが町人に化けて ここへおりますが、質入れの着物 ネズミにかじられたとの事で 
お互い揉めております。


この様子を障子屋台で 障子越しに声を聞いていた良門が、
質屋の店の女が 妹の七綾姫と知れ、小狐丸を七綾姫に預けます。


ちょこっと一息。

ここで?が飛んだ方は もう一度 読み返してくださいね。

序幕から私石蜘法印と組んで、さんざん画策していた 高明(亀三郎さん)は、身分を隠してます。
本来の許嫁の 七綾姫(尾上右近さん)と知らないながらも いい仲。
七綾姫は 良門の妹!




ここへ遊女のおのぶ(猿之助さん)がやってきて、高明を巡って 三角の縺れとなり、
仲裁が入り三人仲直りのお酒やら、蝋燭の影やらで、影が七つに映る事で、

おのぶは女が七綾姫とわかります。
七綾姫はまた、ネズミを恐れないおのぶの顔が キツネに変じたことで 小女郎狐と知れます。


そして小女郎狐は身の上を 高明に語り始めます。



小狐丸の刀の宿直(とのい・・番ですね)をしていたのが 小女郎狐の父。
キツネの中にも位があり 盗まれた事で 親狐はつらい思いをして 死んでしまったとか・・・。 

それゆえにその刀を盗んだ高明に接触して 刀を取り戻そうとしていたのです。

高明に身の上を語る小女郎狐。

高明も父を殺され お互い同じ身上の小女郎狐に心をうたれ 刀を返してやります。


ここで面白いなと思いますのは あくまでも 小女郎狐の目的は小狐丸。

それさえ 手に入れば 悪人だろうが何だろうが どうでもいいのです。
同じような某演目(笑)あえて書きませんが、その演目との比較で
取り返せばいいという この意識も パロディの楽しみ方ですよね。


話が逸れました。

そんな中、探索の捕手たちに七綾姫が将門の娘と知れ、囲まれたところに、
兄の良門が現れ正体を明かします。

そして、捕手達と戦ううち頼光よりの、言伝を知らせに来た卜部末武が現れ、
四方を囲まれて追い詰められた良門。

末武は、勝負は次の機会と頼光の仁心を伝え、また、高明は、天下取りを諦め
七綾姫と、夫婦となる事を誓い、良門は心も新たに、みなみな 別れて参ります。

と、分かったような わからないような こう云ったお芝居です。(笑)



強引にまとめましょう!

強引過ぎたらごめんなさい。

今月の夜の部としての 一つの演目としてのまとめです。

実は、私自身が今回こうして 系統立てて書かせてもらって 
新しく発見したと云ってもいいかもしれない事なのです。

一日通して上演されていた18年前とは また違った主題になっている気がします。



まとめてしまいますと、

将門、純友二人の反乱から数年。

次の世代の物語が 実はこの「四天王楓江戸粧」だったのではないでしょうか。

純友の無念を晴らしたい 高明&辰夜叉姉弟、(辰夜叉が純友の妻です。)
そして 将門の無念を晴らしたい 息子良門、娘七綾姫。


この物語だったのかなと。

それに 立ち向かう源頼光と その四天王が 活躍するお話。



結局・・・高明は 野望を捨てて許婚と二世を誓い、良門は一旦退去。

悪者が いなくなってしまいまして めでたしめでたし???(笑)
え??それでいいの?と思ってしまいますが これが 「歌舞伎」なんでしょうね。


将門・純友の次代の話が 繰り広げながらも 一貫した登場人物は 左大臣高明。
陰の主人公は 高明のような気も致しますが・・・

最後は なんでやねん!と云うような 良い人物になります。
高明側からの物語を つづって見ますと もしかしたら 高明の心境変化もわかるかも?
色々な経験をして、高明も何かに気付いたのでしょうか??(笑)




分かりやすく書かせて頂こうと 思って簡単に書いても こうなります。(笑)

ご観劇頂いた皆様は どう感じられたでしょうか?(笑)



わかっても わからなくても これで『四天王楓江戸粧』の解説を終わります。(笑)