11月明治座花形歌舞伎も今日で十日目。
だいぶ手慣れて参りました。


昼の部の『夏姿女團七』の二幕目、本来の『夏祭浪花鑑』でしたら、
「住吉大社の鳥居前」の場面ですが、江戸に置き換えたこの狂言では、
「両国橋の橋詰」になっております。

上方(夏祭)では、住吉大社の開帳参りの 人がたくさん訪れている場面、
そして 江戸(夏姿)では、隅田川の川開きと 回向院の開帳参り。

同じように 人の集まるときと場所だったわけですね。


もっとも、夏姿には 開帳参りの場面はございませんし、
誰かが出牢してくるわけでもございません。


ですが、舞台正面には髪結いどころの錨床があり、これは上方のやり方のままです。

昨年の十月は、私大阪の松竹座に出演しており、その時の演目、夜の部が
やはり愛之助さんの 『夏祭浪花鑑』でした。


この錨床(碇床)、上方、江戸で変わるわけではないのですが、
役者によって暖簾が変わります。(笑)

今回の猿之助さんの暖簾は、「暴れのし」に、「きのし格子」と呼ばれるもの。

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「のし」と云いますのは、ご存知のお方もたくさんおられると思いますが、
本来はアワビを干して「熨した」ものを云います。

おめでたい時や、お正月などによく見られますよね。

長寿を願う為に熨した高価なアワビを縁起物として、使う訳です。


正面の図柄はその熨したアワビを束にした模様で「暴れのし」と呼ばれます。


私の手拭いにも粗品の横にワラビの模様で、「ワラビのし」が描かれております。

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緑色の文字が「のし」 と書かれてございます。



先の暖簾の写真、面白いのは、猿之助さんのご本名「喜熨斗(きのし)」と、申されます。
(ブログでこのことを書くたびに思うのですが 本当に おめでたい! 苗字です)


のし暖簾に書かれてある格子は、カタカナの「キ」が書かれてあり 
縦に四本筋がありこれで 四=「し」。
格子の間に「の」の字があり、これで「きのし」格子!

のしとのしの 二重におめでたい模様と云うわけなのです。


昨年の愛之助さんの時の暖簾をもう一度、見てみましょう。

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真ん中に松嶋屋さんのご紋である「丸に二引き」。
そして愛之助さんの定紋であります「五枚銀杏」が描かれて居ります。

隠れミッキーではありませんが、歌舞伎の狂言は至る所に、
こういった遊び心が満載なのです。


色々なところで 探していただけたら また違った楽しみがあると思います。