『獨道中五十三驛』の御芝居では、数多くの人物が、京より江戸を目指して 旅を続けております。

ひと癖ありそうなこの人物も、あちらこちらの脇筋で 重要なキーワードを握っております。

赤羽屋次郎作(あかばねやじろさく) 云わずと知れた寿猿さん

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設定では女衒(ぜげん)ですので、全国 あちらこちらに出没しても 不思議ではありません

女衒とは、地方でいい女を見つけると 安く買いたたき 吉原や 色んな遊郭などへ
その女を高く売りさばく 商売人の事を云います。

ま、女衒と云えば聞こえはいいですが 本来は人買いですよね。 


地方の寒村などは 米や作物が取れない時などは 収入がありませんから 年貢も収められません

そんな地方の実態を把握して 現れるのがこの女衒。

父、母は 娘などを売って得たお金で生活をして居ました。確かにそんな時代もあったのでしょう。

良い悪いではなく そんな時代もあったということで、お芝居を見ていただければと思います。



お話を御芝居に戻します。 

恋人の丹波与八郎が追手と戦ううちに 重の井姫(笑也さん)は この次郎作と出会い
女衒の手にかかり、与八郎の馬が積んでいた葛籠の中へ 押し込められてしまいます。

次郎作は重の井姫を女と捉え どこかへ高く売るつもりだったのでしょう。
その葛籠をこの次郎作が背負って 逃げるのです。

さすがに、この葛籠の中には入れるふりだけで 実際 重の井姫はこの中にはおりませんが、
お芝居とは云え この葛籠だけでも 大きくかなりの重さです。

それを八十?歳の寿猿さんは 背負って走っております。脅威ですよね。(笑)




凄いついでに ここでひとつ 寿猿さんのエピソードを・・・。

先月の巡業公演で、小倉の公演が終わり 博多へ向かう為に 私と寿猿さんと 弘太郎さんと3人で 
会館である北九州ソレイユホールから小倉駅まで タクシーに乗りました。

弘太郎さんは忘れものをしたとやらで 途中、一旦ホテル前でタクシーを降り 
私と寿猿さんが 9時40分頃に小倉駅に着きました。


博多行きののぞみ 会社指定のは10時頃でしたので それは充分に間に合います。
ですが、少しでも早く行きたいのが人情。


着いたのが正確には38分で、2分で乗れれば、もう1本前の40分発ののぞみに間に合います。


寿猿さんは10時頃の指定に乗るつもりと見受けられましたので 
「2分後には1本前ののぞみが来る」と 云いましても 寿猿さんの足では 
タクシー降り場から 新幹線ホームまでの かなりの長い距離を走るのは到底無理でしょうし 
走ってこけでもしたら 大けがにもなると・・・


しかも、走って一本でも先に乗りたいというのは あくまでも 私個人の希望でございましたので、
寿猿さんに強いることも出来ません。
まして、頑張って走れば一本前に 間にあうかもしれないというのは・・・
知らない方がいいこともあるかもしれません

そこで、何も云わずに 私はタクシーを降りて 「お先に行きます。」と 早足で走りました。



しばらく走って エスカレーターで振り返ると 寿猿さん 私を見て 後を追いかけて来て 
走っているではありませんか!

私はキャリートランクを ガラガラガラガラ引いております。



寿猿さんは大きなリュックサックを えっさほっさと 背負っております。


まさに赤羽屋次郎作! 



大げさではなく、エスカレーターから 転がり落ちそうなくらい びっくりしました。




私がエスカレーターを降りた時 のぞみの扉が開き 飛び乗った後に 寿猿さんも乗って来ました。(笑)

おそるべし寿猿さん(笑) 

その後 弘太郎さんもホテル周りからようようの事で 飛び乗って来ました。


それを見た 寿猿さんがひと言 




「弘太郎くん 間に合ったの? 若いね~!」





って・・・。

私 唖然!(笑)


誰が誰に 若いのやら・・・。小倉でのエピソードでした(笑)


寿猿さんには どんなに走って どんなに追いつこうと思っても、さらにお元気でどんどん先を

まさに「突っ走って」行かれておりますので 追いつくことが出来ません


見習わなくては・・・(笑)