本来の、古典歌舞伎の舞台には 「演出家」と云われる人が 存在しません

江戸時代より 歌舞伎の演出はすべて 「座頭」が担当して参りました。

舞踊劇に限り 振付をする方が 演出的な事をやってきた事はございます。

藤間の家元は代々 そう云う お立場だったのでしょうね。



明治に入り 新歌舞伎と云う物が流行した時、当時の文芸家の方々が
脚本を担当して その時に演出家として名を 連ねた方もおられますが
おそらくは座頭が ほとんどの演出をしていたと思います。


昭和の時代に入り 西洋のお芝居の影響もうけて 演出家と云う立場が
段々明確になって参りました。


『ぢいさんばあさん』や『高瀬舟』の本を書いた森鴎外  
また、『小栗栖の長兵衛』の岡本綺堂は 他にも『鳥辺山心中』『番町皿屋敷』
などの 脚本を書き 後年 巌谷愼一さんと云う方が 演出を担当したり 
しておられました。


また『元禄忠臣蔵』『将軍江戸を去る』などの真山青果さんは 
後年娘さんである 真山美保さんが演出を担当しておられたのは 有名なお話。


その他では『曽根崎心中』の宇野信夫さん 『春日局』の北条秀司さん 等々。



ですが それでも歌舞伎は本来、座頭がすべての演出を任されるのです。


猿翁旦那もスーパー歌舞伎の時は御自分が演出を担当されておりました。

脚本は『ヤマトタケル』や『オグリ』などは 梅原猛さん
『八犬伝』『新・三国志』シリーズなどは横内謙介さん 

でも色んな歌舞伎が多くなり 実験的と云うより 
様々なジャンルの歌舞伎が たくさん誕生して参りました。



おもだか屋一門以外では 勘三郎さんが演出家を招いて 歌舞伎座で上演する事が
多かったです。

野田秀樹さんの『ねずみ小僧』、渡辺えり子さんの『昔話桃太郎』『舌切雀』
コクーン歌舞伎の串田和美さん などなど

それぞれが一時代を築いた方たちを お招きしての新たな歌舞伎の挑戦でした。



今回のスーパー歌舞伎セカンド『空ヲ刻ム者』も新たな伝説の始まりでしょうか?

主役 座頭が演出を担当すると どうしても1人称的になりがちな所がございます。


演出の時はあえて誰かを 主役に見立てて代役をさせ 猿之助さんが
演出席におられましたが これは猿翁旦那の時も同じ演出の仕方です。


そして 本来 私もスーパー歌舞伎の補佐として担当していた 演出助手は
今回の セカンドには存在しませんが 逆に猿之助さんと同じ立場の
演出家が居られます。


それは この『空ヲ刻ム者』の脚本を書かれた 前川知大(まえかわともひろ)さん


猿之助さんが舞台に立たれると 前川さんが演出家としての存在感を発揮されます。


新橋演舞場の千秋楽 松竹座の初日には 猿之助さんのまねきに応えられて 
カーテンコールの舞台にも登場されました。

今日の写真はその 演出家の前川知大さん

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先生とお呼びするには あまりにもお若過ぎて 少し呼びにくいのですが、
本来は先生とお呼びしなくては なりません(笑)

・・・私が年をとっただけなんて 云わないでくださいね。


今回のスーパー歌舞伎セカンドで 前川先生の演出家としての存在も
揺ぎ無いものとなって参りました。


セカンドの2 3 今後も本当に楽しみですね。(笑)