皆様が初めて歌舞伎のお芝居をご覧になったときには
どういったことに ご注目されたでしょうか?
どういったことが 一番感動されましたでしょうか?


物語の筋立て、衣裳の豪華さ、道具の大きさ。
スーパー歌舞伎から入られた方は そのスペクタクル性?


それぞれ、いろいろな感じ方があると思いますが そこで何か響くものがあり
恐らく その後も歌舞伎を 見続けて下さっているのでしょう。

その時に 何も響くものがなければ おそらく二度と 歌舞伎を見ない・・・
という方もおられることでしょう。



私は 最初に見た歌舞伎は 正直覚えておりません。
幼かったこともありますし、ある意味「父の仕事」の一環でした。

一番心に響いたのが 私にとっての 初めての歌舞伎だとしたら、
中学生の時に観た 松本白鴎さん(オウの偏は メ ではなく 口×3です)と、
尾上松緑さんの『加賀鳶』でした。

これは 形式美ではなく 演技、間、そういったものが 心に響きました。



その後、たくさんの舞台を見ていくうちに お気に入りの役者さんができ、
気になる役者もたくさんできてきて、そのうちに三階さんにも注目して・・・

というのが、はまっていく王道なのではないでしょうか(笑)
こうなったら そうそう抜け出せません(笑)



皆様が 私たち名題や 三階さんを覚えるきっかけって なんでしょうか。

いい役をしていて「あれ誰??」と思われて 覚えていただけるのは
役者にとっては ある意味とっても ラッキーです。

いい役を頂き、それで お客様に覚えていただけるだけの演技をしたら
それは やっぱりうれしいです。


でも、そういった目立ったところではなく、一言の台詞、一つのトンボ、立ち回り
また、ただ立っている それだけで 注目していただけるような
本当に ある意味「コア」なお客様も 本当に嬉しいものです。



中には、黒衣の姿を見ても 誰かわかる方もおられますよね(笑)
吹替えでも、誰だかわかってしまうという コア過ぎる方も・・・(笑)



そんな中、私は 正直 あまり特徴のない役者なのかもしれません。

今、私を知っていただいている方の中には この「ブログ」が
きっかけという方も 少なくはないのではないでしょうか(苦笑)


特に特徴がないのが 私の特徴・・・・と 半分自虐的に思っていた私が

知ってもらいたい、私が聞いてきた昔の話を伝えたい、昔の芸談を残したい 等々

いろんな気持ちで始めましたのが このブログですので、
それもまた・・・・いいといえばいいのですが・・・(笑) 


特徴のある方が うらやましかったのも 事実です。


私の父も 声に特徴のある役者でした。
私はその父の声が 好きではなかったのですが・・・・

父であることもあり、その声を「味」と思えなかったのは
子としての私の  僻目でしょうか(笑)


その父と同じではないのですが、この人も 台詞を言いますと
ハッと 意識が行く 特徴のある声を持った 役者さんの一人です。

ある意味うらやましい「味」を持ったベテランの一人。


今日の写真はスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』初演時からの同僚 澤五郎さんです。

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お役は昨日のブログでも話題に致しました 幕の牢屋での看守長の役人。


『俊寛』の瀬尾の様に 囚人に対して 意地悪な役どころですが、
なぜか持ち味の人の良さも現れて どこか憎めない 悪人を演じております。


彼も数少ないスーパー歌舞伎での初演時からの おもだか屋一門ですが、
彼もまたスーパー歌舞伎に於いて 私、同様 途中、入院を余儀なくされた一人(笑)

古典歌舞伎などの舞台裏の事にもたけていて 今では、猿之助さんにとっては 
なくてはならない貴重な 側つきのお弟子さんの一人です。


これからご覧になられる皆様、二幕の看守の演技に注目したうえで、
声、ぜひお聞きくださいね。