『ぢいさんばあさん』の鴨川料亭の場で、刀の目利きを致しております
私 柳原小兵衛。

刀は普段の歌舞伎で使用する竹光ではございません


やはり、ひかり具合や 持った実感の見た目を大事にされていまして、
ジュラルミンの刃の刀を使用しております。

もちろん 刃はございません 

(刃はないとは すなわち、研いでいない、斬れる部分のないもの
 と云う意味です。)

これは、一応、許可の要らない小道具の刀です。
どちらかと云うとひかり具合を重要視致しております。


ですが、歌舞伎と云えど演目によっては 銃刀法の許可のいる小道具を
使用する場合もございます。



歌舞伎の中で 刀の目利きの一番の演目と云いますと
『梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)』
(お家によっては狂言名がかわりますが・・・。)

刀を題材とした演目ですので、これは本身を使用いたします。

本身と申しますのは、鉄身(てつみ)の事。

小道具ですのでこれにも 刃はございませんが、砥げばもちろん 
刃となる事が可能な 刀を使用いたしております。

ジュラルミンに比べて ひかり具合はどちらかと云うと鈍く 
重量は倍くらい違います。


これは銃刀法の許可が必要です。 

出処は藤浪小道具さん  そして 劇場から舞台で使う旨を申請して 
都道府県公安委員会より 許可を頂きます。


同じように許可の必要とする演目に『太功記十段目 尼崎閑居の場』での
武智光秀の 使用いたします、これは太刀の方ではなくて脇差しの方。


真柴久吉を竹槍で射抜こうとして 竹槍の枝をそぎ落とし 
思いがけなく母の皐月を 間違えて刺してしまいますが、
このそぎ落とす時に使用する脇差しに許可が必要となります。


また『時今也桔梗旗揚』の愛宕山連歌の場での明智光秀が使用いたします刀も
許可の要る本身が使用されます。


その他、役者さんによって異なりますが 『仮名手本忠臣蔵 五段目』の定九郎や
『籠釣瓶花街酔醒』で佐野次郎左衛門が使います名刀 籠釣瓶。

これらも本身を使用する場合があるそうです。


本身とは申しますが、実際に斬れる物は 使われておりません。


『石切』は別として こう並べてみますと面白い事に 
謀反や恨みを持った役を演ずる時に
使用する刀の小道具に 鈍いひかり具合や 本身の凄みと云う物を
醸し出している必要性があるのかと 思われます。


あくまでも小道具としての用い方ですから 表現に他意はございませんので、
そこのところの ご理解をお願い申し上げます。
  
刀が出てくる演目でも それぞれの「見た目」にこだわって 小道具も
違って参ります。

小道具に少しご注目頂ければと思います。


ちなみに 普段の演目で差している刀よりも 持った感じはずしっとしてます。

そして、少しでも130両に見える様に 幕が開く前に 最初に手にする私が
毎日磨いております(笑)  私が持ち主じゃないのですけどね(笑)