世話物の世界も多くある歌舞伎ですが、『権三と助十』のように

その時代 場所を 反映させる演目も少なくありません



そんな中で名奉行と云われる 大岡越前守が歌舞伎の中で 
名前だけでも登場するのは、この『権三と助十』くらいでしょう。 

と 書きますと このブログを読んでおられる読者は
きっと不思議がられる事でしょう。(笑)


江戸時代の有名人を挙げよ といいますと、おそらくは早い時期に
出てくるでしょう 大岡越前。

ですが、これは どちらかというと テレビの印象。

舞台でも 歌舞伎役者が大岡越前守を演じた記録は 多々ございます。
しかしそれは、いわゆる色ものと呼ばれるお芝居で、

歌舞伎の中に 大岡越前守が登場する事は あまりないのです。


『梅雨小袖昔八丈(つゆこそで むかしはちじょう)』通称「髪結新三」。

このお芝居も、白木屋お熊の 誘拐(かどわかし)がモチーフとなっており、
これを裁くのは 大岡越前守なのですが、実際にさばいている五段目 お白洲の場は
初演の五代目菊五郎さんの時以来 登場致しておりません

つまり、名前は出ましても 登場することは 普通はないのです。



唯一、1996年2月 猿翁旦那の第8回春秋会で『梅雨小袖昔八丈』の通しを
上演いたしました折に、「お白州の場」を附け加えた事がございました。 

新三と大岡様との二役を 猿翁旦那が演じられました。
大岡越前守の歌舞伎への登場は これが久ぶりではないでしょうか?
(全部を網羅して確認したわけではないのですが)


後は『天一坊大岡政談』や『大岡越前守と天一坊』という演目では
登場しておりますが、それくらいでしょうか。



ここで、あれ??と思った方も おられるかもしれませんね(笑)
印象深い 大岡越前を 見た覚えがある方も 多いのでは??

私も一緒に出ておりましたが・・・確かにおりました、濃い(笑)大岡越前。


シネマ歌舞伎でも有名な『野田版 鼠小僧』でも、大岡越前守が登場致します。
覚えておられる方も 多いかと思います。
先月も アンコールで 上演されていたみたいですね。


これは「名奉行」である大岡越前と云うより 「鼠小僧」という世界観の中で
泥棒である「鼠小僧」よりも悪役と云う ひねったパロディ版(笑)


まあ、見た方にはわかるかと思いますが この大岡越前、三津五郎さんの
好演、快演、怪演 「大岡越前」の枠を超えた 人物でした。


面白かったですが、やはり大岡様は良い人でないと・・・
なんだか 収まりが悪い気も致しますのは 江戸時代から続く
勧善懲悪になれた 日本人だからでしょうか。

(もっとも 『鼠小僧』の大岡越前の「悪」はまさに勧善懲「悪」で
 すっきりいたしましたが(笑))


様々な大岡様の話を 書かせて頂きました。



と、ふと思いました。

同じく 江戸時代の有名人。暴れん坊将軍こと「徳川吉宗」

彼が出てくる歌舞伎のお芝居ってありましたっけ??

ちょっと思いつきません