明治座、夜の部の切り狂言は『権三と助十』

作者は鳥辺山心中 小栗栖長兵衛 などの岡本綺堂です。


私も、先日夜の部の出番が終わった後に 客席から見させてもらいました。



このお話は、テレビでもお馴染みの大岡越前、
講談で言います所の 大岡政談の中の有名なお話で、
テレビや講談などでも 何度となく取り上げられております。


舞台でも歌舞伎で 多く演じられて来ております。


お話の内容は至って簡単なのですが、ある事件で下手人とされ 
御吟味で牢死した 長屋の彦兵衛さんの無実を晴らそうと 

大坂よりやってきた息子の彦三郎(笑三郎さん)の為に
大家さん(右近さん)が知恵を出し 権三(獅童さん)と助十(松也さん)が
その力になると云うもの。



中でも面白いのが、この事件、大岡政談の中の一つではあるのですが、
お芝居の中では 事件を裁く大岡越前守が一切登場しないのです。

台詞の中だけで「大岡裁き」と云われる 名奉行ぶりを見せると云う演出。


世話物であるにもかかわらず、1時間40分に渡る上演時間、
お話の舞台は、ず~っと権三と助十の長屋だけと云う設定も 奇抜です。



このお芝居は、物語のどんでん返しもさることながら、

江戸時代の 長屋の雰囲気を楽しんでもらうための演出が 至る所にございます。



まず、権三と助十は駕籠かきですから、長屋に商売道具の駕籠が置いてあります。

この時代 駕籠は自分たちの持ち物の駕籠もございますが、

本来は元締めの駕籠屋が 駕籠かきに 日銭で貸し出している事が多く、
その賃料を払った後の稼ぎが 自分たちの1日の稼ぎになります。

このあたりも少し台詞で説明しておりますので、よくお聞きください。
(わかりにくいかな~)


それから、圧巻なのが「井戸替え」と称して 長屋の住人全員で 
井戸や下水を掃除する様が、「引き縄」と呼ばれる縄を数十人で引く作業。 


これは井戸に溜まった汚れた土や草などを 綺麗にする為に 
一旦水を掻い出して 人が井戸の中に入り 桶に汚れた土などを入れて 
上に居る住人に引っ張り上げると云う作業のもの。

実際 長屋では1年に1度 こう云った作業をしていたのでしょうね。


私、実はテレビの番組の企画で、この井戸替えの作業を
TOKIOの山口君と城島君たちが しているのを見た事があります。

(実際には 使っているものの清掃ではなく 使われていたものの
 復旧作業ですが、そっちの方が大変なのではないでしょうか。
 どちらにせよ、現在では あまり見ることもない 作業でしょうね)

古びた井戸でも こうやれば段々綺麗になるのだと云う事を 
その時 初めて知りました。


それを 実際にやって見せてくれる この番組は 本当にすごいですね。
私この番組大好きで 毎週録画して見ております(笑)


そんな、今では テレビの企画くらいでしか 
ほとんど見ることのできない 「昔は当たり前に行われていた」風俗ですが、
それを 歌舞伎では見ることができます。

これも歌舞伎とは云え ひとつの生活文化の記録ですね。(笑)

また、違う意味で面白いと思いましたのは、この『権三と助十』が
歌舞伎できるのなら、テレビで放送された、大岡越前のすべてのお話が、
歌舞伎で上演できると云う事ですね。(笑)

『縛り地蔵』や『三方一両損』『二人の母の子争い』など 歌舞伎で見られる事が
出来るかも?(笑)


今月の舞台の『権三と助十』 他にも 色んな江戸時代の情緒が 
醸し出されておりますので、そのあたりも、楽しんでご覧ください。


またいつか、この江戸時代のあり様も どこかで書かせて頂きます。