長谷川伸の名作『瞼の母』

この作品 猿翁旦那や今回の獅童さんの番場の忠太郎等
私の出演も含めて 何回 見て来た事でしょう!


無声映画の頃の片岡千恵蔵さん(もちろん リアルタイムではありません・・笑)
復活無声映画大会等の折に、若い頃に道頓堀の朝日座で見ました。

その他 先代、中村錦之助さんの映画も見ました。

舞台では新国劇でも 大衆演劇でも上演されております。もちろん歌舞伎でも!



面白いのが、舞台上での 頭の形 所謂 「かつら」ですが、
映画や新国劇 大衆演劇では、番場の忠太郎は渡世人ですから 
かならず「毟り(むしり)」と云われる形で 髷(まげ)の下に毛が生えております。

これに対して歌舞伎の番場の忠太郎は「中剃り(なかそり)」と云われる 町人の髷。


映画等では、やくざなイメージを表に出し、
歌舞伎では母を思う 一途な気持ちを表しております。


これは、『瞼の母』に限らず『一本刀土俵入り』の駒形茂兵衛も、そうです。



実は『瞼の母』の戯曲は歌舞伎が初演ですが、その時は「毟り」でした。
今回の明治座の番付に初演時、昭和6年の守田勘弥さんの番場の忠太郎の写真が
掲載されております。


おそらく十七世勘三郎さんくらいから 歌舞伎での上演の時は「中剃り」にされ
その影響で現在も その形が続いているか?と思われます。


舞台をご覧になられるお客様は 番付の写真の 忠太郎のかつらと
実際の舞台の かつらを見比べていただけますと よくわかると思います。



今回の『瞼の母』獅童さんの番場の忠太郎は、
18世勘三郎さんを踏襲されており、勘三郎さんよりは長身で細身、
そして映画の錦之助さん(獅童さんの叔父様にあたります)を彷彿させ 
なかなか素敵な忠太郎を演じておられます。


獅童さんは平成22年2月博多座で初めて演じられてその後 巡業 
そして今回と、3度目の忠太郎ですので、もう御自身の演目にされておられます。


歌舞伎で股旅物、いわゆる渡世人が主役のお芝居と云うと 本当に珍しいです。


先の二つの他には、村上元三さんの『ひとり狼』
真山青果さんの『荒川の佐吉』くらいでしょうか? 


今日の写真は、私。 

忠太郎が母を訪ねてくる料亭水熊の板前 善三郎です。

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私善三郎自身は、根っからの「やくざ」 ではございませんが、
純粋な「堅気」でもない そんな立場でございます。

また、もう少し致しましたら この善三郎についても 詳しく語って
行きたいと思います。