どこの舞台においても、どんな役であっても、
この人が登場すると 何とも云えない安心感と 暖か味がございます。

云わずと知れた我が一門の 猿弥さん

今回は昼の部『大阪純情伝』で同心の山本森右衛門

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若者の集団 天神組と雁金組の対立に間に入って 目を光らせておりますが、
どこか憎めない役人です。

若い方には馴染はないかも知れませんが、ちょうど、映画の
『ウェスト・サイド・ストーリー』の ジェット団とシャーク団の間に入る 
クラプキ巡査を思わせる役どころ!!(笑)

なかなか面白い 持ち味を出しております。



夜の部の『夏祭浪花鑑』では 番頭の伝八

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大阪弁の二役に 四苦八苦していると本人は云っておりますが、
発音のニュアンスが ちょいと違っても どこか大阪人に見えるから
不思議な人。(笑)


番頭伝八 これも猿弥さんならではの役どころですが、
番頭さん役は初めてだそうです。


大鳥佐賀右衛門に加担する、こっぱの権 なまこの八の悪巧みに乗っかり 
義平次 仲買いの弥市と共に 磯之丞から五十両という大金を巻き上げます。



ここでひとつ、解説なのですが、住吉鳥居前の場面で磯之丞は三婦に助けられ 
団七に身柄を預けられ 内本町道具屋で清七と名前を変えて 手代として
潜り込んでおります。


そこの番頭のこの伝八 この店の娘 お仲にべた惚れで 
ゆくゆくはと思っている所へ この二枚目の清七が来て 
娘お仲が清七にのぼせ上っていることが 腹立たしくてなりません

なんとか清七を 店から追い出すために 画策を致しております。



そこへこっぱの権 なまこの八が 伝八に磯之丞を探してくれと 頼みに来ます。

伝八はその磯之丞というのが 清七かと思います。



ここで、猿弥さんとも話したのですが、

・こっぱとなまこに頼まれて 磯之丞を探せば 金になると云う事

・仲買弥市と義平次の偽侍と結託して 五十両だまし取りする計画

この二つは つながっているわけではなく 全く別の展開なのですが、
同じ場面で ふたつのこのお話が出てくると おそらくお客様は
混同されてしまうのではないか?  

ごっちゃになる危惧がございます。と 猿弥さんは云っておりました。


こっぱとなまこは この道具屋に磯之丞が居る事は知りません 


この二人が伝八に 磯之丞を探してくれと 頼みに来た以前に 
義平次と弥市と伝八の悪巧みはすでに出来上がっております。


伝八といたしましては 娘のお仲を自分の者にする為に 
清七(磯之丞)を失敗させて 店から追い出したいだけなのです。


ですから、義平次も清七が磯之丞である事を知りません 

ただ伝八の悪巧みに乗っかり しっかり自分は 五十両の半分を 
せしめ様としております。

伝八が義平次を偽侍に化けさせ 弥市から偽物の香炉を清七に預けてあるのは 
すでに幕が開いた時点で 出来上がっている悪巧みなのです。


物語の順から行くとこちらが先で こっぱの権となまこの八が 頼みに来るのは
後からなのです。 





ここのところがお芝居では簡略化してある為に 少し分かりにくいかも知れません

もう一度ご覧になる時は ここのところをお含みおき下さいませ。


番頭伝八は一応悪人なのですが 猿弥さんが演じると所謂 どこか憎めない奴。


ですから、義平次 弥市はいずれも斬り殺されますが、伝八はだんまりの中で
はずみで川に落ちますが その後はどうなっているか分かりません(笑)


他の方が演じると おそらくおぼれ死んでいるのだろうと想像されますが、
猿弥さんが演じると きっとどこかの岸に泳ぎ着いて 
命拾いしているのだろうと 想像させてしまうのが不思議なところ。

どこか お客様を安心させます。 


このキャラクターは天分でして 本当に得な役者さんですね(笑) 

羨ましい部分もありますが 私が逆立ちしても なにをしても
絶対にこのキャラクターだけは 真似できません(笑)


いえ、真似は致しません。
おもだかやに 猿弥さんは一人でいいのです。