本日は八戸市公会堂での公演でした。

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朝 青森のホテルを出て 駅に向かいましたが、うっかり青森駅に行ってしまい
新幹線の乗り場の無い事に気づき、駅員さんに聞いたところ、
「新青森駅はとなりの駅です。」

と聞き、真っ青! 



少し早目の時間に駅に来ていたので 
「今から出る この列車に乗れば その時間のはやてに乗れます。」と云われ 

とりあえず ひと駅分の乗車賃を関係なく「ここから入って急いで下さい。」と
入れていただきました。 

青森の駅員さんの 温かい人情に触れた体験をいたしました(感謝)


行程表をよく見ると ホテルから「新」青森駅へ タクシーで と
確かに書いてありましたが、私がうっかり青森駅と告げてしまったようです(笑)


こんなウッカリもありますので、知らない土地では やはり少し早目には出て
駅に来ないと 駄目ですね。


朝から 嫌な汗をかいてしまいましたが、八戸の昼夜の公演が終わりました。
終演後は 盛岡に移動です。

今、盛岡に移動するためのはやてを 待っている間にこのブログを書いております。
現在 夜の10時過ぎ、1時間に1本しか列車がありません(涙)

ま、その話はともかく・・・(笑)



今月の右近さん主演の『毛抜』

これは歌舞伎十八番ですので、本来は成田屋(市川團十郎)のお家のものなのですが、
この『毛抜』にはもう一つの演出がございます。

二代目、市川左團次と云う方が 自分が演じる時に 成田屋に敬意を払って、
團十郎型ではない、自分のやり方を作りました。


これが所謂 左團次型で 今回の右近さんの粂寺弾正はこの左團次型です。


もちろん 猿翁旦那もこの左團次型を 踏襲されておられ 
右近さんも それに倣った訳です。 


この左團次型の『毛抜』かつらは同じなのですが 裃の衣裳の柄や 他 諸々が 
團十郎型と違います。

衣裳の事はまた改めて ご紹介するとして 今日は演出面の事を 
少し御紹介致します。


團十郎型の『毛抜』の舞台は幕が開きました時点で すでに 小野家の館の中でして、
花道から登場する弾正は、すでに玄関を通過して屋敷内におります。


今月の舞台をご覧になられた方は この時点でお分かりかと思いますが、
舞台全体の造りがまず、違います。


左團次型は 舞台下手に枝折戸がございまして、幕開きは下手は屋敷の外に
なっております。

ですから下手に松の木がございます。 

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弾正の家来の訪ないに対し 私、民部が通行を許しますと 弾正が枝折戸から
入って参ります。


ここまでは下手は外。枝折戸を開けて入ってきたところからが「屋敷の内」になります。

ですが、弾正が通過致しますと 後見が、この枝折戸を撤去致します。


これは歌舞伎にはよくある演出で、
「戸が無くなったので、この後は、下手も含めて ここは全部 館の中ですよ!」 
と云う事になります。 


舞台を広く使う工夫と 空間の変化です。
(松の木の事は あまり気にしないでください・・・笑)


ですが、最後に弾正が帰ります時は 後見が草履をはかせます。

枝折戸が再び 出てくる事はありませんが いきなり花道が 
外になってしまう訳です。(笑)


舞台上が その時その時によって 様々な空間に 瞬時に変化いたします。
こういった変化は 歌舞伎ではよく見られる手法です。


もっと変化する例は、『義経千本桜』すし屋の段 

弥助 実は平維盛(たいらのこれもり)が、若葉の内侍 六代と共に
お里に逃がして貰うシーン


お里がお辞儀をして送りだしたその後は お里が木戸のところにいるにも拘らず 
木戸が撤去され 地舞台の座敷(上敷き)そのものも無くなってしまい 
権太が再び登場する時には 唯の地舞台(庭)になっております。
奥には まだ屋台が残っているにもかかわらずです。(笑)

ところが、上方式では 木戸は撤去致しますが 上敷きはそのままで 
うちの中のままです。(笑)

梶原景時が大きな衣裳で通る為に 木戸からは入られず、
その為に 木戸を撤去致しますが、座敷にまで土足でづかづか 入って来る様相を
物語っております。
 

この「すし屋」の違いに関しましては、
上方式はリアルを追いかけますので、江戸式のこう云った なんでもありの
大まかな事を嫌うからです。

が・・・ 木戸を撤去してしまうなら 同じかな?(笑)


他にもたくさんこう云った例は ございます。
これはある意味 同じ空間 舞台に変化を持たせるためです。

また、話がそれました。(笑)




他にも『毛抜』の弾正 今回の左団次型では、登場の時 
共侍と、槍とはさみ箱を持った 奴二人を従えておりますが、
團十郎型では 共侍のみ 付いており 奴は登場しない演出です。

ですから、最後に忍びの者を 天井で突き刺す槍を持参しておりません

團十郎型では 小野家の館の長押にある槍を 使います。 

もし成田屋型(團十郎型)の『毛抜』も ご覧になる機会があれば こう云った違いを
楽しんで見られるのも 面白いのではないでしょうか?

今日の写真は 成田屋型には登場しない奴です。

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モデルを 猿之助さんの新しいお弟子さん 郁治郎さんにお願い致しました。

彼は昨年2月博多座の折にに入門して 6月、7月の新橋演舞場の
おもだかや襲名披露公演に於いて名前を頂き 市川郁治郎となりました。



こう云った、新しい若いお弟子さんが増えて行くのも 歌舞伎の舞台が活気に湧く
原因の一つです。