ここ数日、大宴会の『豪華絢爛 妖怪絵巻』の話題に終始しましたので、
今日は本来の、金丸座公演の演目について書かせて頂きます。

昼の部の最初の演目『鳥辺山心中』 
作者は『小栗栖長兵衛』と同じ 岡本綺堂。


明智光秀を知らずに討ち取った 嫌われ者のヒーロー 長兵衛(中車さん)と違い、
鳥辺山の主人公 菊池半九郎(愛之助さん)は、二枚目で女性にもてるタイプの男性。

難を云えば少し短気で 配慮がたりなかった! 



売り言葉に買い言葉で 思わず決闘をしてしまい 親友市之助(右近さん)の弟 
源三郎(猿弥さん)を 斬り殺してしまいます。

我に返った時には すでに時遅し、自分の惚れていた 遊女のお染(春猿さん)と 
心中してしまうと云う、哀しいお話。


実際に江戸時代にあった出来事を モデルにお話が書かれているみたいです。


いつの時代も 短気は損気! 
頭に血が上りやすい 私どもでもよく考えなくては・・・(笑)



このお話、作者は岡本綺堂ですが、どちらかと云うと、先月の森鴎外の作品、
『ぢいさんばあさん』と 似通った所がございます。


『ぢいさんばあさん』では美濃部伊織(中車さん)は誤って 
下嶋甚右衛門(右近さん)を斬り殺してしまいますが、

『鳥辺山心中』では半九郎(愛之助さん)と源三郎(猿弥さん) 
がけんかになってしまいます。

どちらも酒の上の出来事! 


舞台は、京都の鴨川に接する料亭。

そして殺されるふたりは、人間的には嫌な奴かもしれませんが、
どちらも、逆に正当な事を云っております。



正当な事言っている人間を 殺してしまったからこそ 
伊織は謹慎処分となり、身は他家へお預け、
半九郎は死ぬしかなくなってしまう訳です。


ただ、半九郎はお染と云う 遊女にしては純情な女性が、
一緒に死ぬ道を選んでくれます。


恐れながらと 訴え出れば、死罪とまでは成らず、
『ぢいさんばさあん』のるんの様に お染は、待って居てくれていたかも
知れませんのにねえ?


この鳥辺山、どこのことだったのか、ご存知でしょうか?


平安時代以前から「鳥辺野(とりべの)」という地がございました。

京都東山 五条坂から七条の阿弥陀ヶ峰のあたり
現在の清水寺から大谷廟、京都女子大学にかけてのあたりがそれに当たります。
(時代によって 地域は多少変わっているみたいですので、ざっくりと)

その中でも、五条通りの東の端。
東大路通りの先にあります 大谷廟の中には、「鳥辺山」と呼ばれる
小高い山もあるそうです。

ですが、正直 ただ小高いだけで 遠くからは山の様にはみえないそうです。

私も 何度かこちらをとおっておりますが、これが「鳥辺山」と思って
見たことはありませんでした。



平安時代以前から 北の蓮台野、西の化野(あだしの)と並んでの
葬送の地でございました。

現在でもお墓などが多く点在する所です。

鳥辺山、鳥辺野という名は、おそらく 皆様もご想像の通り・・・
詳しい解説は やめておきます。



ちなみに、先ほども書きました 阿弥陀が峰には 豊臣秀吉を葬った豊国廟が
ございます。

かなり昔ですが、大河ドラマの『秀吉』のオープニングにはこちらの石段が
使われていたそうです。




いずれにしても お染と半九郎が晴れ着に着替えて この地を目指したと云う事は、
死を決意した哀しい物語です。

四条の河原から、東山五条(もしくは七条)まで、今でも歩こうと思えば
十分歩ける距離です。

この坂道を 二人はどんな気持ちで登ったでしょうか・・・



今日の写真は その純情な遊女お染です。 
おもだかや一門の 春猿さんが演じておられます。


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愛之助さんの菊池半九郎とともに、新コンビで とても新鮮な感じがする演目です。
春猿さんの新境地開拓でしょうか?(笑)

おそらくこれから この鳥辺山のお二人。 

色んな演目でコンビを組まれる事が 多くなるかも知れませんね。

楽しみです。