現在 BS-テレビでは 懐かしい昔の作品を 色々放送している時がございます。

色んな作品の中で、気になりましたのが、松本白鸚さん主演の『鬼平犯科帳』

登場人物の設定も 同じ役どころを 昔の方が演じているので 
それはそれは懐かしく 面白く見ていたのです。


実はこの『鬼平犯科帳』は作者である池波正太郎さんが 
白鸚さんをモデルに 長谷川平蔵(鬼平)を 描き下ろされた、と 
云われているのは有名なお話です。


ちなみに『剣客商売』の秋山小兵衛は 先代中村又五郎さんがモデルと
云われております。



今では、ご子息の中村吉右衛門さんが 鬼平の代名詞ともいえる時代劇ですが、
その放送本数は すでに父上であられる白鸚さんを 有に超えておられるそうです。


何回見ましても やはり『鬼平』は面白いですよね(笑)


時代背景や食べ物 立ち回り等 色々な所が 実に丁寧に撮られているように思えます。


その白鸚さんの『鬼平』を見ておりまして ひとつ気になっていた事がございました。


鬼平の着流しの折の 帯の結び方です。


写真をご覧ください

イメージ 1


(おしり失礼します・笑)

これは今月 私が夜の部で『ぢいさんばあさん』の柳原小兵衛で 
着ております着物の帯の結び方で 結び方は貝の口の変形で、
「片ばさみ」と申します。


下から出ている帯の端 細い方が手 または手先と申し 太い方は返し。

この帯の結び方は 所謂 武士が仕事ではなく 普段のリラックスした状態
で使われております。


これは、江戸結びで 手が左側に来ております。 



ところが、テレビの白鸚さんの鬼平の結び方は この手が逆で、
右に来ているのです。

写真のように・・・。


イメージ 2


(綺麗に結べてないのは お許しください。 楽屋で個人的に結びましたので・・)


江戸の帯の締め方は 着物の襟の合わせと 逆方向に帯を締めます。 


しかし 上方の締め方は着物の襟の合わせと同じ方向に 帯を締めます。 

ですから手が 逆に来ていると云う事は 帯の締め方が逆方向であり、
いわゆる「上方の締め方」になっているという訳です。


江戸が舞台の『鬼平犯科帳』で なぜ帯の締め方が 逆なのか? 悩みました。



江戸と上方。この違いはこのブログでも何回も取り上げました。

鰻の江戸の背開きと 上方の腹開き。 

門松の飾り付け 江戸の節切りと、上方の斜め切。等々


現在ではエスカレーターの立ち位置の右、左 等。(笑)

この東西の習慣の文化の違いは、今にも生きております。




では、なぜ江戸が舞台の『鬼平犯科帳』の帯の結び方(締め方)が逆なのか?


答えは! 楽屋が同室のある方に教えて頂きました。

江戸が舞台の時代劇ですが、実際にその映像を 撮影しているのは
京都の撮影所なのです。


ここでは、関西の衣裳さんが俳優さんの衣裳に携わっておられ、
その為 古くからの東映時代劇も 帯の締め方は京都の衣装さんに従い
上方式だったのだそうです。


衣裳さんも上方の衣裳さんは 逆方向の江戸締めが 慣れないのだそうです。

今でも、昔からの意地みたいな所もあるのでしょうね(笑)



それを聞いて私も目から鱗!! なるほど と思った次第です。



ただ、現在の吉右衛門さんの『鬼平犯科帳』に関しましては 
東京から衣裳さんも付いて行くそうで、帯の締め方は江戸締めなのだそうです。


なんでもない事なのですが、もしこれから再放送ものでも、時代劇をご覧になる時は、
ひとつご注目下さい。(笑)


テレビで時代劇を見ていても 色んな事に目が行ってしまうのは 
歌舞伎役者の僻目でしょうか?(笑)