昼の部の『小栗栖長兵衛』 夜の部の『ぢいさんばあさん』このふたつの演目。

歌舞伎の公演で、歌舞伎の役者が演じている訳ですから、歌舞伎には違いないのですが、
両方とも書かれたのは、大正年間。 

作者の岡本綺堂さん 森鴎外さんは同時期の方。(この後 敬称略)




『仮名手本忠臣蔵』や『義経千本桜』また『近松物』が江戸時代中期に
書かれた事を思えば、限りなく現代に近い作品です。


ですが年代だけを追いかけますと、忠臣蔵など文楽の初演から 明治維新を過ぎて
『小栗栖長兵衛』や『ぢいさんばあさん』が発表されるまで およそ160年。

そして『小栗栖長兵衛』『ぢいさんばさん』の発表から現代に至るまで 
およそ100年。

すべての歌舞伎が 江戸時代に書かれている訳ではなく 様々な年代に
やはり歌舞伎は書かれております。

確かに『仮名手本忠臣蔵』などと比べますと 言葉や時代背景が 
分かりやすくなっております。


それから考えますと、平成中村座の新作の演目や スーパー歌舞伎と云う物も
100年後 200年後にも残って行く作品かな~ と思ってしまいます。


面白いのが、歌舞伎ですから、どうしても風俗は、時代を
追い掛けなくてはなりません
ちょんまげや 女形のかつらと云う物は どうしようもないものです。


背広姿やスカート姿では 見得は切りにくいですし(笑)
女性のメイクも、洋服に白塗りと云う訳にも行かないでしょう! 

男性もスーツに赤っ面など あまりかけはなれて 誇張したものにも出来ません(笑)


その時の時代(現在)に合わせた歌舞伎で 一部に明治の後期に書かれた
残斬りもの
(ちょんまげを切った後の残った髪と云う意味)と云われ、

明治の時代を扱った 歌舞伎もございました。


河竹黙阿弥 最後の作品『島鵆月白浪(しまちどりつきのしらなみ)』などは 
その典型的な残斬り物でしたが、やはり時代と共に、上演回数も少なくなり、
逆に、なにか時代にそぐわない 演目とされてきました。

当時の、現代劇のような歌舞伎は受けず、やはりその後も 
江戸時代や それ以前の時代を 背景に書かれた作品が 受けた様です。


来月の、こんぴら歌舞伎でも昼の部に『鳥辺山心中』と云う 演目が上演されます。

この作品も『小栗栖長兵衛』の、岡本綺堂の作品ですが、
森鴎外、作の『ぢいさんばあさん』の2場と同じく京都の料亭が舞台です。


これらの作品と 本来の歌舞伎の典型的に違うところは、同じ江戸時代
(もしくはそれ以前)を 扱って居ながら、見得がない、と云う事です。


それから 違う作品なのに どこか同じような匂いがするのは、作者が
同時期の人だからでしょうか?

もし可能な方は 来月、ご覧になって比較してみて下さい。