『毛抜』の中で 私 万兵衛は 小野春風に対して 妹を殺したと
嘘の事をでっちあげて 小野春道の館へ 怒鳴りこんで参ります。


これはお芝居をご覧になられた方は もうお分かりですが、万兵衛は
猿弥さん扮する八剣玄蕃の手下でして、ある人の策略の為に
小野春道 春風 親子を困らせるために 仕組んだ事です。



その私 万兵衛の台詞の中に

「わしが妹は 1年 1両2分が給金で 
こなたの所へ 腰元奉公にこそ よこしたなれど こなたの手かけにゃ 
しやせぬぞよ!!」

とございます。


ここで、1年 1両2分の給金となると 如何程でしょうか?(笑) 

読者のみなさま お分かりになられますか?
何度も出ております、お金の話。

もうピンときている方も多いでしょうね。



もちろん 台詞のゴロとしての数字とも 解釈できますが、
江戸時代の貨幣価値から申しますと

1両はおよそ 現在での8万円から10万円。


ここでは10万円として 換算致します。 4分で1両ですから、
半分の2分は5万円。


つまり1年(年収)15万円のお給料で 月収 12.500円と云う事に
なります。 

今から考えると とても安く感じますが、これは頂く給金で 
その他の事 食事はついておりますし 館で着る物などは 仕事着として 
(例えば矢絣 やがすりの着物等)は配給されます。


ですから当時としては お給金はほとんど手つかずで 頂くのも親の所へ行ったりして
個人が受け取る事は ほとんどなかったと云っていいでしょう。



ですからある時に ご主人や 色んな方から頂く 少しのご祝儀が 
小遣いや自分の好きな事に使える お金だったかも知れません


この武家の社会の仕事着などの配給 これは別かも知れませんが

町人の、例えば丁稚奉公などの時も 給金は年いくらで 着る物も お店から

頂く事になります。 これを 『お仕着せ』 と申します。


現在では なにかを無理やりさせる事に この表現が使われますが、本来は
お店から頂いて 仕事で使う着る物の意味です。


この当時の娘さんの武家奉公は、行儀見習いのためもございますが、
一年に15万円。

さて、皆様でしたら このお値段、どう思いますか?(笑)