今日は終演後、 若手たちと個人的な 飲み会です!!

それゆえ 少し早目のアップです。



『小栗栖長兵衛』には馬が登場致します。

最後に中車さん扮する長兵衛が乗って 花道を入る馬ですが、これは所謂 駄馬。


人を乗せて街道を歩いたり 荷駄を積んで往来して路銀を稼ぐ 

右近さん扮する弥太八の商売道具。


歌舞伎に登場する馬は たくさんございますが、人を乗せて動くとなると、

この馬、実は大変な重労働です。


馬だけで30キロ?ほど その上に人が乗るとなると おそらく100キロ近い

体重を二人で支えております。



現在では、かぶり物と云われる分野が有名で ミッキーマウスに始まり

ご当地モデルの、ひこにゃんや せんとくん 野球などのマスコットモデルも

大勢ございますが、どれも大変なのは 中に入っている人!!



それでもミッキーなどは お客様と一緒に写真を撮ったり ある意味 胸のすく所もあるかと

思いますが、歌舞伎の馬は お芝居に差し障りなく 登場して消えて行くだけで、

お役様から馬、その者に対しての拍手は ほとんどないと云っても過言ではありません




『小栗判官』の馬にしても『熊谷の組討』の馬にしても 大変な作業を強いられますが、

拍手を頂くのは 上に乗っている 判官であり 熊谷です。


今回も幕切れ 花道を入る中車さん扮する長兵衛には ひと狂言の終わりに際し

絶大な拍手を頂いておりますが、ここで馬が頂く拍手は 少ないでしょう!!


実はこの馬 誰が演じているかは企業秘密ですが、 これもれっきとした技術の必要な

特殊技能。


そして何より 体力がもっとも必要となります。
 


写真はこれは今回の『小栗栖長兵衛』に登場する 馬ですが。 写真をご覧ください。


イメージ 1



後ろに入っている人は かなりの前傾姿勢で入っている事になります。


そしてこの小栗栖の馬 登場してから舞台上に30分以上 

立ったままで その時が来るまで 待っております。


これが大変なのです!!。



私、実は閉所恐怖症ですので 狭い所に何分も閉じ込められていると 暴れ出したくなります。


ですからもし、若い頃に 馬のお役が来ても 私にはできません



笑也さんが初期 名題下の頃に 小栗判官の暴れ馬に入って居たのは 有名な話ですが、

馬の脚から成功した人は 本当にまれなようで 遠い所では 森繁久弥さんも 

市川 寿海さんが乗った、歌舞伎の馬に入っていた事がおありになると 

聞いた事がございます。


またまた話が それました。(笑)

 

小栗栖のこの馬に入っている人は その閉所に耐えて じっと時間を待っております。


さらに後ろに入っている人は 自分の下しか見えず お芝居を見る事も叶わず 

せまい熱い空間で ただ台詞を聞いているだけです。 




別のお話ですが、この馬 歌舞伎でもある演目で実物が登場した事がございました。


しかし 毎日の舞台ではやはり うまく行かず ひどい時には舞台で糞をした事も

あったそうです。


それに何より 誇張した歌舞伎の衣装と 実物の馬が、
つろくしないと云うのが実情で

悪評ばかりで 取りやめになったそうです。



それに不思議な事なのですが、馬は競馬でも見られる様に 

前足と後足が・・  例えば右足が 同時に出る事はありません



ですが 歌舞伎の馬は これをリアルに表現して 前足と後足が逆に出ると おかしなもので

人間が演ずる歌舞伎の馬は 前足と後足 同じに動く方が自然に見えるのです。



馬に限っても 誇張は自然 リアルは非歌舞伎と云うのも 

面白い歌舞伎の発想かも知れません