今月の明治座公演『傾城反魂香 吃又』で

私 北の方は蜀台を持って登場致します。


この蜀台は小道具ですので 蝋燭の先に赤い綿がつけてあり 

その中は 豆電球になっておりますので、
手元のスイッチを入れれば 赤く燃えているように見えております。



ですが、火を消すとなると、スイッチを切って消しまても 

赤い綿だけは どうしても残ってしまい、

火が消えたようには 見えません


ですから私は 火を吹き消したような動作の後に 

蝋燭の火が見えないように 裏向きで 行燈の陰に隠しております(笑)



ならば本火を使い 普通に使えばいいじゃないか!!

と 思われがちなのですが、これがそうは行かないのです。


舞台上で 本火を使いますには、まず消防署の許可が必要になって参ります。



それこそ、おとわがうちの中で吸う煙草 煙草盆に入れる炭から 

たとえば 四谷怪談の提灯抜けの本火 

また、鈴ヶ森などで 舞台上で 手紙を焼いてしまうような 所作まで 

すべて消防署の許可がいります。




申請書には 何のお芝居で 何時から~何時まで 
こう云う火の使い方を致します。
責任者は誰々で 舞台で使う人の役名と役者名。 

そしてその舞台での火元責任者。


さらに本火を使ってる最中 消火器を持って舞台袖で待機している人たちの
名前に至るまで!!


ですから、本火を使う箇所が少なければ それに越した事がないのです。


これは日本全国 どこの劇場に於いても その地元の消防署の許可が必要です。


以前、こんぴら歌舞伎での鈴ヶ森の場面、

さすがに木造建築で 日本最古の劇場ですから、

本火を使う事は、必要以上に気を使いました。


ここでは、江戸歌舞伎よろしく 舞台前面が照明の替わりに 

百目ろうそくを並べ 本火での照明。


さらに舞台上では幸四郎さんが 幡随院長兵衛で 手紙を燃やす所作。

舞台は木で出来ておりますから 50センチ四方くらいの鉄の板を

土の色に塗った物を舞台上に敷き その上で手紙を燃やしました。 


このように 本火を使うのは各劇場とも 本当に気を使います。


今月『傾城反魂香』は まだ蜀台だけですから 

無理に本火を使わなくてもよいのですが、 

それでも どうしても必要な場面での本火。 


今月の夜の部『天竺徳兵衛』での二幕目。 

女房おとわに殺された小平次の霊魂が人玉となり 

花道の引っ込みで おとわの後をついて行く下りは 

さすがに小道具の赤い綿で それらしくと云う訳には 参りません


消防署の許可を取り 細心の注意を払ってのこの場面となっております。


もちろん事故は、起こらなければ それに越したことは ございません



花道で使う人玉の正体は 差し金と呼ばれる釣竿の先に 
針金で吊した純度の高い焼酎を 浸した丸布を使います。

これに火をつければ 青白く光り 如何にも人玉に見えるのです。

これも昔の人の知恵ですね。


ただやたらと ビショビショに浸して 火をつけますと 

花道に火がポタポタと落ちる事になります。 

まだ 花道に落ちるくらいならまだしも、

万一 お客様の着ているものに 落ちようものなら 
お客様が火ダルマになりかねません

また焼酎を入れている容れ物などに 火が入ると一度に ボッと燃え上がります。


あれはあれで 浸す量的なモノや 浸してから何分後に火をつけるか?

結構 気を使い 難しいものなのです。 

ま、気持ち的には ガソリンを使っているようなものですね。


ですから もちろんここでも 消火器で待機している人や 責任者がいる訳です。

ひとつの効果を盛り上げる場面も これだけ面倒な事が必要である訳です。



私の持って出る蜀台が 小道具であって本火でないのは 少し情緒がございませんが

どうかお許しくださいませ。(笑)  




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