『熊谷陣屋』におきまして 平敦盛の代わりに 我が子 小次郎の首を討ち
身替りにたてる 熊谷直実。


その敦盛は 義経に匿われて 弥陀六(弥平兵衛宗清)に
その身を委ねられます。



その時に敦盛を 鎧櫃(よろいびつ)に隠して 弥陀六に預ける訳ですが、

『熊谷陣屋』に限らず 鎧櫃が登場する お芝居は沢山ございます。


では、今月、この舞台をご覧頂きました方、
そして 過去に 『熊谷陣屋』をご覧になった方、

鎧櫃には 何と書かれてあるでしょうか???



わかりましたか?

必ずこの字が書かれております。



答えは・・・・

 

この鎧櫃 『前』と云う文字が 書かれてございます。


イメージ 1






では、なぜ『前』と書いてあるか おわかりですか?


鎧のこちらを 前にして収めて下さい!! と云う訳では ございません

逆に裏側に『後』と書いてあるはずも ありません(笑)



歌舞伎のサイト 歌舞伎美人にはこのように 書かれてございます。
(以下、要約して 引用させて頂きます)



この『前』と云う文字は 『勧進帳』などに出てくる 

九字の真言と云われる 魔よけの言葉、

《臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前》の

文字の一つの『前』と云う字を書いてある事になります。


この言葉の意味は

『「臨」める「兵」、「闘」う「者」、
 
 「皆」、「陣」をしき「列」をつくって、「前」に「在」り』


と云うことを現しております。



つまり

「味方の兵は意気揚々としており、布陣は盤石で

 私を守って前方を固めている。

 だから敵も悪霊も、私に危害を及ぼそうとしても無駄な事だ。」


と云う意味と取れますので、 


鎧櫃に『前』と書くのは 敵に対して積極的に出る と云う意味と

鎧が前面で しっかり持ち主を守るように 

と云う祈念が込められていると 思われます。


と ございます。 





『熊谷陣屋』も 後3回だけですが、弥陀六が担ぐ時には 

この『前』の文字が 後ろに来るために ご覧になれないかも知れません


上手 障子屋台を 藤の方が開ける際、 緋縅の鎧が登場いたします。

その鎧の下に 鎧櫃がございます。 

その文字がもし 見えるようでしたら、ご覧ください。



今回のブログのネタ提供は 小道具のBちゃんから いただきました。(笑)

少し前に頂いたネタなのですが、なかなか 鎧櫃の写真が撮れず、
(と云うより 私に気持ちの余裕がなく) Bちゃんをヤキモキさせてしまいました(笑)

ごめんね~!!



ネタ提供 感謝いたします!!!