今月の末から、巡業のお稽古がはじまります。


現在 歌舞伎のお稽古は 歌舞伎座近くのお稽古場を使用しておりますが、

それ以前は、現在の松竹本社が建て替えられるまでの 
旧 松竹本社の中にお稽古場がございました。



それとは別に『ヤマトタケル』のスーパー歌舞伎の初演の時には 

できるだけ舞台の 実寸大のお稽古場が必要なために 
森下町にあったベニサン・スタジオを使い

『オグリ』以後のスーパー歌舞伎では 蒲生のお稽古場を
使用しておりました。


これらのお稽古場も 時が過ぎた現在では閉鎖され 
使用する事が出来なくなりました。


今回のスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のお稽古では 
新木場の倉庫をお借りしての お稽古となりました。


これから後は ここかな?とも 思いましたが、
夏場 冬場はエアコンもなく 今回の5月と違い 
とても無理なのだそうです。

今のこの暑さでは おそらくここでは、とてもお稽古できませんよね(笑)




お稽古場!! 

これは 役者 舞踊家にとって いえ、歌舞伎俳優だけでなく 
すべての俳優さん 役者さんにとって永遠の課題です。


個人でお稽古場を持てる環境、これほど 憧れるものはございません



好きな時にお稽古が出来 また廻りの雑音等に影響されないで 
没頭できる環境。


あいにく私も入れて 普通の歌舞伎役者には そんなお稽古場は
持てる訳もありません


でも 会社から通達があってからの集合稽古では 
他の方々の迷惑にならないよう ある程度の下稽古をしてから、
お稽古場の稽古に 臨まなくてはなりません


台詞のように 文字を覚えるだけのお稽古でしたら、
まだなんとか自宅で 部屋に閉じこもればできますが、
お芝居の動きや 踊りとなると これはもう 場所がないと
出来ない訳です。



場所があっても 畳敷きでは踊りの稽古には適しません 


無理にそこでする事は ありますが、ささくれが立ち 
畳も傷んでしまいます。


やはり所作板・・・とは申しませんが 
狭くても8畳くらいの板の間があれば ベストです。





昔の話ですが 以前のおもだかや一門の舞踊会『翔の会』などの時は 
非常に困りました。



旧松竹本社の時は、お稽古場があいていれば まだ自由に使う事が出来ました。

でも回を重ねる事に 段々厳しくなりました。



お芝居の公演が増えたせいで お稽古場は常に
どこかの舞台のお稽古に 使っているか、
また 不審者侵入の管理が必要なために 誰かが必ずチェックしなくてはならず 
その費用等もかかる故 個人的お稽古場使用は 有料となってしまいました。




しかたなく 公共施設の会館や和室など 安いところを探してきて
その費用を分担して 払っておりました。 




私が当時の『翔の会』の幹事をしておりましたので、
板橋の文化会館の和室や憩いの家、グリーンホールなどを 
翔の会の総浚いなどに 使用しておりました。


こんな遠くまで 紫先生や 藤間勘吉郎さん 藤間勘世(吉蔵)さんに 
よく来て頂いたものです。



なぜ板橋かと申しますと 普通のお稽古場に比べて 
区民ですと料金が安い事が大きいのですが 
確実にあいている日を選ばなくてはならず 

2か月前の予約開始日の早い時間、だいたい9時が受付け開始なので、
出演劇場に行く前に 私が会館に行き 予約を取るのです。


その予約を取るのが大変でした。(笑)

が、今思いますと いい思い出です。


今も住んでおります板橋に そう云った思い出の地が
ある訳なのですから。




今では赤坂に お稽古場も出来、
おもだか関係の舞踊のお稽古はある程度 自由にできますので 
こんな苦労はもうありません



『舞踊会』『発表会』

それは当日 舞台で踊りを踊るだけではなく
その日が決定してから 逆算してその当日までのお稽古の順番や場所 等
流れを 作って行く事が 大変な作業だったのです。   


当時は 本当に 皆、金銭的に厳しかった事もあり、
役者が それをすべてして こなしておりました。

お金を出したら 誰かがやってくれることも確かにございました。 

そうしたら おそらく簡単だったことかも知れませんが、
それをあえてする(と云うよりも せざるを得ない?)当時でございました

舞台に立つだけではない事を まさに「勉強」させてもらう

そういう「勉強会」だったと思います。



本興行もまたそうです。

私たち役者だけでは 出来る訳がございません

また、私たちが 日々触れ合っております 衣装さんや床山さん
大道具さん 小道具さん。

この方たちはもちろんですが、それ以外にも 様々なプロデュースをする人
そして 本当に 色々なところに それぞれ 細かい調整をする人

そんな方の 結晶として 舞台は皆様に見て頂けるのです。



そう云う「勉強」会 を知っているのも 私の ある意味自慢です。




お稽古場から 飛躍してしまいました(笑)


色々な人の力で 舞台も勉強会も すべて出来上がっております。

この事を考えながら 舞台に立って行かなければ・・・と改めて思います。