今月 昼の部での猿之助さんの襲名披露狂言。

云わずと知れた『義経千本桜 川連法眼館の場』 

(通称 「四の切」 五段あるうち これは四段目の切り狂言と云う意味です。
 もはや ご存知ですよね・・笑)




猿翁旦那の当り役 この場面だけで1000回以上の上演記録がございます。

猿之助さんが勤められるのは 亀治郎の会で5日間 昨年、明治座で25日間。


そして今月 25日間。 


千穐楽まででも 合計 まだ55回でしょうか?


私が、昭和47年1月に 猿翁(当時猿之助)旦那の四の切を
初めて ナマで見せて頂いた時、すでに350回記念でした。


私もこの演目 その後、600回以上にも渡り 出演させていただく事になるとは、
この時は 思いもよりませんでした。(笑)


新猿之助さんもこれから ライフワークとして
何百回も演じられて 行かれる事でしょう。

一回一回 積み重ねて行って頂きたいです。


私もこの作品 結構出ております。
残念ながらと申しますか・・・静御前 義経 法眼 駿河次郎と云ったお役は
やった事がございませんが

その他の亀井六郎 法眼妻飛鳥 腰元 荒法師など 
随分といろんなお役をさせて頂きました。


その中でやはり 一番多く勤めさせて頂いたお役が 狐忠信でした。(笑)


先日の渋谷お練りの際 ヒカリエで大亀治郎博を開催しており 
その際にこの四の切の舞台が 実物大で展示されておりました。


ここへは上がる事が出来ましたので 今月ご観劇のお客様も
多くこの舞台装置に立たれたのでは ないでしょうか?


そして今月の舞台 興味深く『四の切』をご覧になられたと思います。


また同時に1時間ほどの記録映画として、この『四の切』の舞台裏を 
何回も上映しておりました。


私は 「え~!!ここまで 教えちゃっていいのかなあ~?(笑)」

と思うほど舞台裏を細かに説明してあり 

早替りの仕掛けや 舞台裏の仕組みなど お客様には 大変興味深かった事と思います。


その中で荒法師との立ち回りの最中 宙乗り用の連尺と云う装置を 
装着する際の時間つなぎに 忠信の吹替えが 登場するシーンまで 
映されておりました。


以前には この事をブログで書いた事がございましたが、
いま、ご覧頂いている方では ご存じない方が多いと思います。
(以前のものも ご覧頂いた方 ごめんなさい)


今回初めて 四の切を ご覧になられた方も おられるかとは思いますが、
ま、千穐楽近くですので お許しくださいね。


実は私 この狐忠信を 猿翁旦那の吹替えとして600回以上もさせて頂きました。



それこそ ドイツ・ベルリン フランス・パリの海外公演でも、

この吹替えをさせて頂き 実に 私にとっては、なくてはならないお役でした。



ですから、本来おもだかやにおいて『四の切』を上演される時は 
何かのお役で必ず 出演しておりましたので

今月のように『四の切』が上演されているのに その舞台に出ていない事が 
とても不思議な感じなのです。(笑)



これも時代の流れ もはや『四の切』も新猿之助さんの手にゆだねられ 

新しい人々で作られて行く時代となりました。


これは おもだかや一門にとりまして 継承されていくと云う 嬉しい事ですね。  



余談ですが、私が名題昇進として 勤めさせて頂いたお役が 
『四の切』の法眼妻飛鳥でした。

この時の川連法眼は 父嵐冠十郎で 生涯で唯一の夫婦役だったでしょうか?(笑)




さらに余談ですが、ある時(笑)、玉三郎さんの静御前の時でした。

その時は 3代目猿之助と玉三郎さんが 17~8年ぶりの共演。
もちろん 私の事など全く御存じなかったと思います。

腰元役をさせていただいて居たのですが、
そのお稽古の時には 玉三郎さんから 本当に丁寧に丁寧に 
色々なアドバイスを頂きました。


その後 舞台稽古の時だったでしょうか??(笑)

まず、腰元に出た私は その後に 忠信の吹替えに出ました。

舞台上におられました 玉三郎さんは まずこの事に ビックリされたのかと
(ちょっと前まで 腰元に出ておりましたから)

その後、「四の切」が終わりまして 「蔵王堂」の場面が開きましたら・・・

今度は 私は 僧兵として登場!!(笑)もちろんトンボもかえっております。


その後に

「あなた 女形かと思っていたら 吹替えもして 僧兵にも出ているの?
 あなた一体何??」


と云われてしまいました(苦笑)


ごめんなさい!!!玉三郎さん。


確かに 私は その頃は 本当に 色んな役に出ておりました。

実は玉三郎さん その少し前のパルコ劇場での『伊吹山のヤマトタケル』公演を
見に来て下さっておりまして、国造の妻 女形をしていた私をご覧になり
「あれ誰?」と 旦那に聞いて 気にして下さっていたとか。(笑)

女形だと思って 色々 教えて下さったのだと思います。


本当にありがたい事だと思います。

その後、歌舞伎座 南座公演『阿国歌舞伎夢華』などでは 私を
女形として呼んで下さいました。


「四の切」の思い出は 本当にたくさん、たくさん ございます。



今度 私がこの『四の切』の舞台に立たせて頂けるのは 
どのお役ででしょうか?(笑)

さすがに もう吹替えはないかもしれません。
(最後の吹替えは平成18年の海老蔵さんの忠信の時です)


が、まだやった事のない役、もう一度やりたい役たくさんございます。

実は今から 今度の『四の切』が 楽しみです。