成田屋のお家の芸 歌舞伎十八番。

その中のふたつの演目が、今月の博多座の公演で出ております。



昼の部の『外郎売』 そして、

夜の部の『勧進帳』 もう説明のいらないくらい 代表的な演目です。


その主人公の弁慶を 十二代目團十郎さんが演じておられます。

そして富樫は 海老蔵さん 


このお二人ここん所 交互で 弁慶と富樫を演じておられます。

七月新橋演舞場、九月の松竹座でも、このお二人の勧進帳が出ておりました。


この時の弁慶は海老蔵さん 富樫が團十郎さん



ところで この歌舞伎の『勧進帳』 

お能の『安宅』を参考に 七代目團十郎さんが 天保11年(1840)に

現在の形に作られたと云われております。


お能の弁慶は、坊主の弁慶 それを 現在の有髪の弁慶に変えられたのが

七代目團十郎さんと云われております。


実は初演の、この時の弁慶は 五代目市川海老蔵さんのお名前でした。


余談ですが 長男の六代目海老蔵さんに八代目として團十郎を譲り 
ご自身は元の五代目海老蔵(團十郎襲名以前の字はゑび蔵)になられた後なのです。


お分かりでしょうか?  

團十郎の後に再び海老蔵を 襲名?されておられるのです。

八代目團十郎さん 襲名当時は十歳。


そして『勧進帳』初演時の義経は八代目團十郎さん 十七歳。



この時代の関係は、かなりややこしいのですが 七代目團十郎さんの五男が

明治の劇聖と云われた 九代目團十郎さん 


これは八代目團十郎さんが三十一歳の若さで亡くなられたからです。



九代目團十郎さんは 五代目菊五郎さんの富樫とのコンビで 

明治天皇の前で歌舞伎を演じられての、天覧歌舞伎は あまりにも有名。


これにてお能などに比較して、低く評価されていた歌舞伎が 
一躍 芸術と認可され 今の地位に上がり 
現在では世界無形文化遺産ともなり 世界の歌舞伎となりました。



明治から大正 昭和の戦前 戦中 戦後のあらゆる名優が 
演じられてきた この『勧進帳』の弁慶。  


現團十郎さんのお祖父様 七代目松本幸四郎さんは
生涯でこの弁慶を1600回以上 演じられました。
 

戦中の歌舞伎座での名舞台、七代目幸四郎さんの弁慶。 
十五代目羽左衛門さんの富樫。 六代目菊五郎さんの義経。 


この上演された時の記録映画が 今はデジタル化され DVDで販売され 
各ご家庭でも 簡単に見る事が出来る様になりました。


当時の名舞台が 白黒の画面でさえも圧倒されるほどの演技。 

それが いとも簡単に見られるのは 最先端の時代の器機と云うのも
いいものですね。(笑)



その後の『勧進帳』 またかの関? と云われるくらい 頻繁に出ているのは
やはり日本人の心に訴えるものがあるのだと思います。


義経の判官贔屓 富樫の情け 弁慶の主を思う心。

これらがすべて この作品に踏んまえられているからでしょうね。



日本の歌舞伎のいいところは ひとつの作品。

例えば この『勧進帳』ですが、 團十郎さんの弁慶で見たから
お話は一緒だし 後は見なくていい・・・などと 思わないところですね。


これが各国の演劇と 大いなる違いなのです。


例えばアメリカのブロードウェイの「ミュージカル」や
イギリスの「シェークスピア」の作品ですと あたり役の役者が一人出ますと
その最高のお芝居を見てしまうと それでもう後は 
見られなくなってしまいます。


『王様と私』のユル・ブリンナー 
『マイ・フェア・レディー』のジュリー・アンドリュース

(映画ではオードリー・へプバーンが有名ですが 
 ブロードウェイではこの方でした。)

そして「シェークスピア」の舞台では サー・ローレンス・オリビエ
この方たちが現在の 最高峰と云われております。



ですが歌舞伎の場合 團十郎さんの弁慶を見たら 
今度は仁左衛門さんの弁慶が見てみたい と思う様になり 
私は現幸四郎さん いやいや吉右衛門さんがいい と

お客様の間で 議論が交わされる事となります(笑)


挙句の果てには 弁慶は○○さん 富樫は◎◎さん 義経は絶対△△さんで

などと プロデュースまでされるお客様まで・・・(笑)


これもひとつの歌舞伎の醍醐味でしょう。

ここが西洋の演劇とまったく違うところ。

お話 所謂 「ストーリー」×「各役者の芝居」=「歌舞伎」 と云う 
方程式が 私の解釈で 勝手に成り立ちます。(笑) 

歌舞伎って不思議ですね。



DVDやテレビで歌舞伎をご覧になられるのもいいですが、
やはりお芝居は 臨場感のある生の舞台で と おっしゃる方は
どうぞ博多座まで 足をお運びくださいませ。(笑)



やはり博多座までは遠すぎる、と云われる方は 
私のブログでお楽しみ頂けますと幸いです(笑)


博多まで来られました方は 是非少し足を延ばしてください。

以前こちら http://blogs.yahoo.co.jp/enzaburou/29745589.html 
でも書きましたが、この 七代目團十郎さんの碑が 博多座のすぐ近くに
ございます。

ご観劇の前後に 是非(笑)