新橋演舞場の10月公演 1週間を過ぎ 
昼の部 夜の部 共に テンポも出て来て 
面白さも倍増しているのではないでしょうか?


もちろん 初日からそういうお芝居をしたいのですが
やはり慣れて来るには 回数を重ねなくてはなりません


難しいところです。



でも慣れてくると 舞台上で どんなアクシデントがおきても
それなりに対処が出来ます。




1993年7月 歌舞伎座で 猿之助旦那が 小栗判官を演じておられた時

1日だけ 大変なアクシデントがありました。



1幕で荒馬を乗りこなす 小栗判官が見せ場であるのはご承知の通り。 


ところが、馬の中の連尺(ベルト)が切れてしまい

中の人が人間の体と 馬体とを支えきれずに 判官が馬から落ちてしまったのです。


馬の中は 張りぼての馬体と 人間とが固定する為に
無数の連尺が渡してあります。


イメージ 1



イメージ 2



うす茶色の太い部分が連尺です。

(ちょっとアングル的に うまく撮れなかったのですが・・・)

写真は下から 見あげた所 あの2本の連尺が人の肩に来て
馬体を支えるのですが それが途中で切れしまい 

中の人はトラブルのため 必死で馬体そのものを手で 支えていたのですが
重さに耐えきれず 馬体がひねられ 上に乗っていた 
小栗判官役の猿之助旦那は馬から 落ちてしまいました。

(こんな太くて 頑丈そうなモノも 切れるのですね)


家来たちが 暴れる馬に 振り回されるような形で 寄り添って
馬を隠しましたが お客様も固唾をのむ中・・・

仕方なく一旦 幕になりました。


そして幕内で 予備の馬に乗り換え ふたたび幕が開いた時の旦那の台詞。



「馬術にては 横に並ぶべき者の居ない この小栗判官も

 連日の熱演でつい油断を致し この荒馬にしてやられたり

 ふたたびの挑戦、 改めて、乗り損じなば 御免なれ!!」

と 馬上で大音声。



そして見事 碁盤乗りを 達成した瞬間は 

お客様 いつものより3倍4倍の大拍手で 

逆に旦那の見事なフォロー演技に 喜ばれたみたいです。



私も横山の家臣の一人で 父と共に出ておりましたが 

このアクシデントを プラスに替えてお客さまを喜ばせる 

猿之助旦那の術は 本当に感心させられました。



普通の人は アクシデントが起きて ハッとするだけですが 

なるほど 旦那は逆にしてやったり こんな時こそ見せ場到来 と 

プラス思考なんだあ。と思いました。



もちろん こんなアクシデント 起こらない方がよいに決まっておりますが、

もし起こった場合も動じない 大者でありたいと思います。



幸い 今月はそのような事故はまだなく 今後も起こらない事を祈ります。

お馬さんも 静かに出番を待っております。(笑)


イメージ 3




余談ですが この公演のこの日ではありませんが 

現アメリカ国務長官のヒラリー夫人(当時はクリントン大統領のファストレディ)が

この『當世流小栗判官』の3幕だけをご覧に なられまして 
舞台上 花道の小栗判官と 客席とで会釈をされたのは 懐かしいエピソードです。