昨日の続き 小道具の事を 今日は書こうと思ったのですが、
すいません 昨日の続きは明日にでも 書かせて頂きます。



9年前の9月 東京帝国劇場にて『残菊物語』を上演いたしました。



御存知 新派の名作!! 作は村松梢風 脚本は川口松太郎さん 


新派ですが 歌舞伎の世界を扱っているこの作品。


新派の名優 花柳章太郎さんの独壇場 
映画でもこの主人公 尾上菊之助を好演されておられます。


その他 映画では長谷川一夫さん 

猿之助旦那も 三代目襲名の記念映画で この菊之助を演じておられます。 


この作品を9年前の9月 帝国劇場で上演いたしました。



主人公の尾上菊之助を市川右近さん 後の六代目菊五郎の乳母お徳を十朱幸代さん
(右近さんの菊之助は 5代目の養子。実子が後の6代目になります)


そして 藤間紫さん 

演出は「伊吹山のヤマトタケル」の佐藤浩史さん 音楽は加藤和彦さん


そして私も、菊之助の朋輩の 歌舞伎役者 市川新蔵を演じさせて頂きました。




序幕の稽古風景は 『車引』の私が梅王丸 右近さんが桜丸。


そして菊之助の義父 五代目菊五郎に 杉浦直樹さん。



今日 この杉浦直樹さんが亡くなられた事を ニュースで知りました。


藤間紫先生 演出の佐藤浩史さん 音楽の加藤和彦さんも 
もうすでにいらっしゃいません




この帝劇公演の折 劇中での歌舞伎の名門 菊之助が ドサ廻りにまで落ち
上方で修業の後 東京に帰り 復活。

そして再度大阪に来て、中座の場面。


ここで 菊之助はかっての女房(十朱さん演じるお徳)との再会を 
五代目菊五郎に許される名場面です。


この時に 五代目菊五郎は この帝劇バージョンのお芝居では 
『め組の喧嘩』の辰五郎の扮装を 致しております。



この時の杉浦さんのお化粧、 劇場スタッフより 私に依頼が参りました。


もちろん それまで歌舞伎のお化粧をした事のない 杉浦さんは

私がした 辰五郎のお化粧の御自分の顔を見て 

「これが 私ですか?」と 目を白黒され  

「これは・・・!!」

「私にとっては カルチャーショックです!! この年になって 
 歌舞伎の世界を知らなかったと云う事は 私は本当に恥ずかしい!!」 と

あの名優が おっしゃりました。


そのあまりにも率直な飾らない姿に 私はびっくり致しました。



「このお化粧は 私にはできません 申し訳ありませんが
 毎日 この時間にお化粧を お願いできませんか?」と 

勿体ないくらいの 低姿勢でお願いされました。 


もちろん「私でよければ・・・」と この 中座の場面の前に 
毎回 杉浦さんの楽屋へ伺い お化粧をさせて頂きました。



私が過去に見ていた 『岸辺のアルバム』や 過去の日活映画等の
杉浦さんに 私がお化粧をしている・・・。


毎日、このお化粧をするひと時・・・
本当に身近に親しく お話させて頂きました。

歌舞伎の事、歌舞伎のお化粧の事、そしてちょっとプライベートの話。

私にとっても 毎日 とても楽しく、ワクワクする時間でございました。


そう云えば、ちょうどこの時に 大阪では中座が炎上致しました。
中座を舞台にした 演目をさせて頂いている時に この事故。

この事も お話させて頂きましたっけ。


この 素晴らしい体験をさせて頂いた 杉浦さんが 
一昨日に亡くなられていたなんて・・。



この帝劇公演の何年か後 脳梗塞で倒れられた事は ニュースで知っておりました。

ちょうど父も 同じ病での中・・ 心配しておりましたが 

父と違って 快方に向かい療養中と伺っておりましたのに・・・



先日のいとしこいしさんに つづいて もう一度 お会いしたかった方でございました。


当時 杉浦さんから頂いた リンゴのお酒 箱入りのカルバドス。

未だに自宅に保存してございます。
(もったなくて飲めなかったのですが、ますます飲めなくなってしまいました。)


当時を思い出しまして、今日は その時の『残菊物語』のプログラムを出して
見ておりました。

帝劇のお稽古場での写真・・・
載せられるものなら載せたい・・・です。

自宅には 個人的に写させて頂いた写真はあるのですが、
大阪では どうしようもございません。

パンフレットの表紙だけでも。
イメージ 1


そのパンフレットの 杉浦さんの紹介文にはテレビドラマの「一心太助」と
出ていました。

来月の演目が。。。何かのご縁かしら?と思いまして 調べましたら 

1999年NHKのドラマ 緒方直人さん主演の「スキっと一心太助」の中で
大久保彦左衛門をされていたみたいです。




杉浦直樹さん 

素晴らしい思い出をありがとうございました。

謹んで御冥福を お祈り申し上げます。   合掌。