一昨日 10数年前の、京都造形大学の歌舞伎講座の折の
小道具のお話を少しさせて頂きました。


この小道具・・・ 

普段は私たち役者も その月に使う役どころの小道具を、
小道具さんより 楽屋に名前入りで届けてもらい 


「あ これはこの演目に使う草履」「これはこの演目の煙草入れ?」 等々

知識があればそれに越したことはないのですが、
知識がなくとも 小道具さんに聞けば これに使う道具!!

と、教えてくれますが・・・。



この大学での授業の折は 発注したものが そのまま大学の教室に届きます。

所謂 予算の関係で小道具しか届かない訳で
分別して下さる人間(いわゆる小道具さん)はおりません


私と猿四郎 いつもこの二人が小道具関係の仕事に携わっておりました。



その昔 猿之助旦那のお客様との交流会で お座敷でお遊びのお芝居物に
私たちが間に合わせで 小道具を分別しておりました。

もちろん本格的なものも在りましたが・・

その時は なくても旅館にあるものを借りて代用とか・・・
そんな事はしょっちゅう。


たとえば徳利がない 杯がない・・なんてのも 

お茶の急須で間に合わせたりとか

もう 杯の替わりでみそ汁のお椀でいいやん!!なんてのも シャレですみ

それはそれで お茶を濁す遊びの会でしたから 笑ってすみました。(笑)

また、それはそれで 楽しいのです。

お客さまだって 完璧なものを 求めてご覧になられているのではなく、
その時 限りの 一期一会に来られているのですから・・・



ところが、京都造形大学での授業の折は そんな訳には参りません

この演目 どの演目 それぞれに小道具さんよりのチェックが入っており
そのひと揃えをお借りするのに 大学より使用費が支払われ 
使ったものを無傷で 本数まで調べて お返しするのが私たちの役目。


演目的には本格的で 

『封印切』に使う 煙草盆 その他 忠兵衛 八右衛門の持つ小道具。

『先代萩』 仁木弾正の花道の引っ込みに使う印籠 差し出し蜀台 百目蝋燭。等々


この印籠が曲者です(笑)

印籠だけ 何種類も入っていると 何に使う印籠かが わからなくなります。

要するに 『吉野山』の忠信も印籠をしておりますし 先の仁木弾正 
『毛抜』の弾正 他 大学の授業でも 複数個使います。

もちろん、ひとつを使いまわすと云う訳ではありませんので、
それぞれ どの演目の誰が使うと云うのは 決まっております。


腰に下げている印籠には紋が入っていたり 模様があったり 
すべてが違います。


その他 煙草盆も 『毛抜』『弁天小僧』『封印切』では 大時代 世話物
場面も時代も すべて違います。

さあ 大変 私たちも見ては知っておりますが いざ並べるとなると
検定試験の様で 真っ白になりました。

(実は旅行会の初期の折 荷物をすべてをあけて並べてしまってから
 何が何やら 分からなくなってしまったのですが 先に申したように
 ある程度 ごめんなさいで済みました・・・今更ながら ごめんなさい・笑)


その失敗があったので 初めての授業の折から 
ある程度の覚悟はしておりました。


ですから届いた段ボール箱 順番に1 2 3 と決め 
それをレポート用紙に書き 何が入っているかのチェックから始まります。

結構やりました。


実は ある小道具で もっと大変な思いをしたのですが・・・

それは また 明日にでも・・・(笑)