今月のル・テアトル銀座。

第1部は『お染久松色読販 お染の七役』

第2部は『女殺油地獄』 


『お染の七役』は物語の元々の部分は上方の芝居。
ですが、このお芝居では、江戸を舞台にしております。
したがって お芝居は完全に 江戸の世界になっております。

この事に関しましては 近いうちに書かせて頂きます。


一方、夜の部の『女殺油地獄』は典型的な 上方が舞台のお芝居。




西と東のお芝居を 昼夜で上演している訳ですが
ここでひとつ面白いお話を・・・


もうご存じのお方は 何をいまさら なのですが、
何気なく着ております衣装の着物、
ここに江戸と上方の違いがございます。



それは着物も、着る時の合わせ方も同じなのですが 
帯の回し方が 西と東では違うのです。

ご存知でしたか?



一般的に、角帯を締めます時に 

江戸の締め方は、着物の合わせと逆に 右から左へ帯を回します。

しかし上方の締め方は 江戸とは逆で 左から右へ 
着物の合わせと 同一方向に回します。 


なぜ 帯の締め方が逆なのかは またいずれこのブログで書かせて頂きます。



と、書きましても 文字の説明では分かりにくいと思いますので、
百聞は一見にしかず・・・


写真で見比べてみてください。


今日の写真は 同じむすび方 貝の口と申しますが 


まず最初は お昼の部の『お染』の時の衣装での江戸の締め方。


イメージ 1


(モデルは鴈成さんです。ありがとうございます)


対してこれが 『油地獄』での上方結びの貝の口。 


イメージ 2


(モデルは?私です・笑)

相対して 結び方が逆になっているのがお分かり頂けると思います。

(関西の鴈成さんが江戸のモデルで、今は東京の私が上方のモデルなのは
 なんだか不思議な気分なのですが・・・)



『女殺油地獄』だけではなく 『封印切』『河庄』などの上方狂言も
この上方締めなので これからご観劇される方は 
ここらあたりもご注意頂きながら ご覧下さるのも 一興かと思います。


ちなみに、名題下の役者は 衣装を着るとき、この程度の帯結びは
自分でやります。(名題以上は一応 衣装さんがやってくれます)

が、東京の役者は どうしても 関西締めが自分ではできないと思います。

関西の役者は。。。どうでしょう?
江戸の締め方、できる人もいるのでしょうが、それほど得手ではないと思います。



私は 関西に15年程、その後東京に出て名題下で約10年。
もちろん、関西在籍の時にも 東京に出てくる事が多かったので
両方の結び方を 自分ですることができます。
あまり そう言った人も多くないのではないでしょうか?


自慢にもならないのですが・・・(笑)

こう云った 経歴のおかげで、名題になった今でも、
上方結びの不得手な衣装さんが付いたときでも、
自分で結ぶ事ができるのは、ありがたい事です。



皆様も、今月の昼夜、帯を是非見比べて下さい。