実は 昨日のディズニーシーで 楽しんでいる最中に 
ある方の お通夜 葬儀の知らせが事務所より入りました。

亡くなられた知らせは 21日に聞いていたのですが 
詳しい事は後日、と云う事で 昨日知らせが入ったのです。


今日がその方のお通夜 

たまたま私は お休みの最中でしたので 
鎌倉まで お通夜に伺わせて頂きました。


その亡くなられた方は 長唄三味線の杵屋栄一郎さん 

まだ64歳と云う若さです。



猿之助旦那のお芝居と云えば スーパー歌舞伎がございますがが 
スーパー歌舞伎の音楽担当は 故加藤和彦さんでした。

 
これはとは別に 古典歌舞伎 復活狂言などのお芝居では 
同じように音楽を担当される方、
所謂 黒御簾音楽の担当で この分野に於いては 
無くてはならない方でした。


黒御簾とは舞台下手にある 映画などではBGMと云われる音楽を
生で演奏するところ(歌舞伎座や新橋演舞場などではお馴染だと思います。)で
役者の台詞のバックに流れて居たり 登退場の時などに 
唄とともに弾かれたり致します。


復活狂言では、スーパー歌舞伎と同じように、
新しく、音楽から作って行く作業が必要になる事もございました。


栄一郎さんのお父上も 杵屋栄五郎さんと云われ 
同じ道を歩まれておりましたが
もう随分前にお亡くなりになりました。

私も親子で この猿之助歌舞伎に携わって居たので 
またひとり戦友を亡くした気持ちです。


親子で猿之助歌舞伎に長くかかわっていたのは・・・

段四郎さん・亀治郎さん、門之助さん親子、栄五郎さん・栄一郎さん
父冠十郎と私。

後、鳴物さんにもいらっしゃるとは思うのですが・・・

同じように 親子での関わりと云う意味では、
なおさら淋しく感じてしまいます。


また、栄一郎さんは 私と年も近く、同じ様にお酒が大好き。

何度も一緒に飲みに行った思い出もございます。



また、仕事の面では、栄一郎さんは本当に 我々おもだか屋一門とは 
交流が深く 軽井沢などでの復活狂言などのお稽古で 
よくご一緒したものです。


その昔『伊達の十役』の明治座初演の折に 過去の台本もなく 
お稽古場で毎日夜中まで お話を作り上げていく作業の中 
栄五郎さんと栄一郎さんは 

「ここは この唄で、 こことここは この三味線の曲で 
 立ち回りの曲は これでどうでしょうか?」

と その場で様々な曲を弾かれ 旦那がそれを決めて行く作業が 
延々と続いたものです。


曲と唄の豊富な引き出しが無くては できない作業で 
栄五郎さんが亡くなってからは 

この復活狂言の音の担当は ず~っと栄一郎さんの担当でした。 


出来上がったものは 再演の時にお手本がありますが 
何もないところから 作り上げて行くのは 
数倍のエネルギーが必要となります。

猿之助狂言の 影の部分をずっと支え続けて下さっておりました。



ここ最近は お身体を壊され 昨年の6月の中日劇場『四谷怪談忠臣蔵』の時も
中日ころに 急遽 帰京されて入院された事がございました。

今日のお通夜で 聞いたのですが その後に退院をされ 自宅療養中、
随分お元気になられ 21日も、朝の散歩をされている最中の 
急な出来事だそうでした。 


お孫さんなども来ておられる最中の、突然の出来事だったそうです。

今日のお通夜の、前列におられた娘さんがお孫さんを抱いて 
目を腫らせて居られたのが 何とも切ない思いが致しました。


復活狂言などの初演の折を知っている 先代猿三郎さん 段猿さん 
などの先輩は仕方がないとしても

猿十郎さんや 栄一郎さん  加藤さんも含めて 
まだまだこれから貴重な人が また同輩がひとりづつ居なくなるのは 
本当にさびしいです。

 

今夜は 杵屋栄一郎さんの 御冥福をお祈りしながら 手を合わせて参りました。