今日は、豊洲のお稽古場で、松竹の関係者の方々ともどもに
役者スタッフが勢ぞろいでの 顔寄せが行われました。


その後のお稽古が、俄然 本番モードに突入して行ったのは
やはり「顔寄せ」と云う 一つの儀式のせいでしょうか。


まだ荒削りな状態ではございますが、だんだんと煮詰められて
まいりました。





では坂東吉弥さんの 思い出 三日目です。


私が吉弥さんの 役柄で 好きなのは 
もちろんスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のヤイレポ
『カグヤ』の翁。

二世鴈治郎さんの『水戸黄門』の舞台の助さん
(これは 名古屋中日劇場での 舞台です。以前に書いたことありました。)
ですが。。。。


古典歌舞伎では 上方物の曽根崎心中の九平次 封印切りの八右衛門。等々
枚挙にいとまがありません



でも私 本当に、一番好きなのは、
スーパー歌舞伎『オグリ』において 照手姫を殺すように命ぜられて、
結局は自分の命も顧みず、 照手の命を助けてしまう二人組。

横山家の下人 鬼王、鬼次 その鬼次というお役でございました。


初演は、段四郎さんと吉弥さんが 演じておられました。


ほとんどの初見のお客様は、このお二人が演じておられると 思わわれず 
あの二人は 誰? と パンフレットを開いて 役名の確認をされ 納得されたご様子。


それほどの「大好演」でした。



このお役、演出の猿之助旦那が シェークスピア劇「ハムレット」の
墓守二人のイメージにて 作ったお役でした。



恐らく 本当に なんでもない 役になってしまいかねない役ですが、
猿之助旦那は、「これをこの二人にやって欲しい」と云う、
本当に深い思惑により、素晴らしい「役」になりました。

見事 その期待に応えられ 一番重厚な場面となったのです。



その他 この「オグリ」では 幕開きの オグリの叔父さんと、先ほどの鬼次、
そして、三幕では難波の商人。


このまるで違う三役を まさに怪演されておりました。



後年、再々演の折には、そのうちの一つ、難波の商人を私がさせて頂きましたが、
できれば鬼次の役も、 その時の私には まだまだ経験不足でございましたが
いつかはやらせて頂きたいな。。と思ったまま、その後の再演が 叶っておりません。

挑戦してみたいお役の一つでございました。



スーパー歌舞伎において『ヤマトタケル』の ヤイレポと この難波の商人。

二つを いろんな人を経て 吉弥さんから私が 引き継がせて頂いた形になります。



また、先日も書かせていただきましたが、『一條大蔵譚』においても、
八剣勘解由のお役 吉弥さんをお手本にやらせて頂いたのも 本当にいい思い出です。




まだまだ 教えていただきたかったことが たくさんありましたのに
66歳と云う、お年での 余りにも早いご逝去、本当に残念です。


実を申しますと、先代の猿三郎さんと、この坂東吉弥さんのお二人
私が心の中で 目標とさせていただいている 役者さんでございました。



改めて 坂東吉弥さんに いろいろな意味で
「ありがとうございました」
と申し上げたい、 そう云う気持ちでございます。