昨日、ゲストブックに夢座さんからコメントを頂きました。
そしてその中に、ご質問がございました。


弁天小僧が南郷と帰るときに 女の島田の髷を頬かむりで隠します。
そのとき「これで、しがは隠れたか?」と申します。
この『しが』とは何ですかというご質問でした。



はじめはゲストブックで個人的にこの答えをお伝えしようかと
思いましたが、せっかくの機会ですので、
今日はこのブログのこの場で、お答えさせて頂きます。


私も、何となくの答えは知っているつもりでした。


ニュアンス的には・・・


緋の襦袢を尻からげして、南郷の羽織を借りて 
ようやく恰好がついたのに あまりに不似合いな島田髷。
その「変な 不似合いな おかしい」ものを隠せと。


流れからは、こういったことだと わかるのですが、
さて、語源は??となると・・・



最初私が考えたのは『しが』イコール『歯牙』かな?と
出しっぱなしにしていないで、みっともない所は隠せの意味かな?と

でも、「髷」と「歯と牙」では ちょっと意味が違うかな?
と 間の時間に図書館へ行き 調べて参りました。


江戸語大辞典には『しが』とは 「さが(性)」の転意とあり、
すべて他人に見せたくない点を云う。
また 過失、欠点、みすぼらしいの意で 欠点、あら、ぼろ、
しくじり、間違い、弱点、よわみ などとあります。


また古語大辞典には『疵瑕』と書き、
同じような意味の事がかかれてあり
また、不運、不幸と言う意味も載っておりました。

私の解釈の(みっともないところは隠せよ)の意は遠からずでしたが、
語源的には全く別でございました。

勉強になりました(笑)


前出の江戸語大辞典には、用例として
「東海道四谷怪談」の序幕の台詞として
「この身のしがを うちあけて お願い申すも 無理ながら・・・」
があげられておりました。


さらにこの『しが』に関する言葉に「源治店」の切られ与三郎の
「しがねえ恋の情けが仇」というセリフがございます。

この『しがねえ』も「しが」から派生した言葉のようです。
”不運な”に続くか、”みっともない”に続くかは
皆様でも少しご想像下さいませ。


ここまで 書いてきて、一つ思いつきました。
今月浅草で上演されております 「一本刀土俵入」でも、
有名なセリフの中

「・・・しがねえ姿の 横綱の 土俵入りで ござんす」

にもこの「しが」が出てきております。


いただいた 質問が 思いもかけないほど 色んな意味を
持っておりますね。

私も 普段は「なんとなくこう云う意味」と云った感じで
分かったつもりでおりましたが、さて、ご説明するとなると
はたと 言葉が出て参りませんでした。


皆様も 疑問やご質問ございましたら、
お気軽にゲストブックに お書き下さい。


今回、私も大変勉強させて頂きました。