今月の歌舞伎座 私のもう一つの出番は 京鹿子娘道成寺です。

道成寺伝説はいろいろな説がございますが、
やはり安珍、清姫伝説が主流かと思います。 


延長6年(928年)醍醐天皇の御代の夏の頃。
一夜の宿を借りに来た美しい僧侶 安珍に惚れてしまった清姫
大胆にも夜に思いを遂げようとして 安珍に制され、 
さらに修行を終えての帰りに必ず立ち寄るとの約束を 
破られてしまいました。

騙されたと知った清姫が どこまでも追いかけ 追いかけるうちに
清姫は口は耳まで裂け 蛇体となって追い詰めます。

とうとう安珍は道成寺に逃げ込んで 鐘の中に身を隠します。
しかし 怨念の塊となった清姫は大蛇に身を変え
その怨念の炎で 鐘ごと焼きはらってしまいます。 

時は流れて400年後 鐘を再興して その供養のために
集まった僧侶たち。そこへ再び 大白蛇が白拍子に化けて
鐘の再興を阻もうとしてあらわれるのが 道成寺の説話です。

その他にも 割と地方にも道成寺伝説があるようで そういう意味でもこの道成寺 
数多くの舞踊の作品がございます。

一番ポピュラーなのが 今回 坂東三津五郎さん演じるところの 
『京鹿子娘道成寺』 その他にも 『男女道成寺』『二人道成寺』
『奴道成寺』『大津絵道成寺』『紀州道成寺』『豊後道成寺』

変わったところでは『切支丹道成寺』などなど ざっと挙げただけでも
これだけあり この他にもまだまだ 道成寺の舞踊はございます。



今回 三津五郎さんの坂東流でのやり方は 道行が大きく違います。 
道成寺まで訪ねてくる白拍子が まだ道成寺に到着していない
道中(花道)での踊り。 
いつもは竹本での唄 演奏ですが 今回は 常磐津を使っております。 
従いまして曲もまったく違います。

さらに衣装の着付けも多少 違っており そこらあたりも 
ご覧になられる時には興味をひかれるのではないでしょうか。


私、この道成寺は いろんな方の白拍子で所化を 何回もさせて頂いておりますが 
この長唄は本当に名曲だと思います。 

今回 道成経(みちなりきょう)の乱拍子に始まり 「鐘に恨みは数々ござれ」 に続き
手まり唄 から 花の吉原 笠踊り 恋の手習い 山尽くし 田植唄 
すべてが名曲でズ~っと聞いていても飽きません 

もう何百年も演奏され続けている訳ですね。 
昨日は新幹線で時代の流れ 今夜は時代が流れても不変の名曲 道成寺。 

すごいものだと思います。 今日は道成寺のお話をさせて頂きました。 

ちなみにこの道成寺の住所 

和歌山県 「日高川」町 「鐘巻」と云う所にございます。