「極付 森の石松」の10月6日の初日は 私 久しぶりの出演となる名鉄ホール。

名古屋駅前の名鉄百貨店の中にあります。
 

三越劇場同様 デパートの中で毎月、お芝居を上演している数少ない劇場です。

こう云った劇場のいいところは お芝居を見て帰りに お買い物をしたり食事をしたり
雨にぬれないで行動でき そしてそのまま お帰りの交通機関に乗れるという
便利さがあります。

ただやはり、劇場そのものはあまり大きくなく 500~600人のお客様が入れば 
満員といったところでしょうか。

その分 ル・テアトル銀座みたいに役者さんたちを間近に見て頂ける利点もございます。


私がこの名鉄劇場に出して頂くのは今回2度目でして 今から35年も前
1973年(昭和48年)に 植木等さん 谷啓さん 南利明さん 中尾ミエさん等

懐かしいメンバーでご一緒させて頂きました。

(不思議でしょ? 私 父の影響で歌舞伎に入る前は、商業演劇のお芝居にも
数多く出させて頂きました。)

このときも 植木等さん主演 谷啓さんとで「たいこもち」と云う演目と
 ご存じ 浪曲でも有名な「大利根月夜」(おおとねつきよ)に出して頂きました。

主題歌はもちろん植木等さん 

植木等さんが平手造酒(ひらてみき)で 私は飯岡助五郎の子分 平手に斬られる
三下やくざをやっておりました。

大詰め平手造酒が酒に体を壊しながら その時、用心棒となっていた笹川に義理を尽くし
飯岡との出入り(喧嘩)にかけつけ 最後に息絶える前に大利根月夜を歌います。

 が このとき 「あれを御覧と 指さす方に~ 利根の流れの流れ月」の文句を
植木さん得意のスーダラ節の曲で歌うのです。

お客様は大爆笑 まじめなまじめなお芝居で、ここまで持って来たればこそ、
このギャグが最大に受けます。

毎回この場面は 私も出演者を忘れ 袖から見ていて、腹を抱えて笑っておりました。

このときに本当の笑いというものを知りました。

一生懸命のお芝居の後に 計算があって 間(ま) そして落ち 
だからこそ、お客様がどっと笑って下さるものだと・・・


現在、本当の喜劇というものお芝居がすごく少なくなりました。

バラエティみたいにその場しのぎの笑いでなく 技術がないと本当の喜劇はできません


故・藤山寛美さんの松竹新喜劇などは 現在ビデオやDVDで販売しておりますが
この植木さん谷啓さんの舞台やエノケンさんの喜劇 森川信さんの雲の上団五郎一座など
ビデオにもなっていない 色んな方々の貴重な舞台を 私は何回も見せて頂きました。


今では本当にいい舞台に色んな方と御一諸させて頂いたなあと 
ありがたく思っております。

今度伺う 名鉄ホール あの日の思い出を大事に振り返り 再び同じ舞台に
立たせて頂けること 大変ありがたく思います。