今日は、段治郎君のヤマトタケル、猿弥さんの帝、お二人の初日であります。
加えて、猿紫さんや、子役さんたちの別グループの初日でもありました。

夜の部を御覧になられた方は、カーテンコールに子役さんたちが出演されていないのを
不思議に思われたかもしれません。

現在、新たなる法律の規制で、九時に退館できない子役さんの出演が認められなくなりました。
従いまして、ワカタケルも夜の部の志貴の里の出演がかろうじてでございまして、
その後すぐに劇場を出なくてはなりません。

振り返りますと、この二十年間に色々な法律の規制がございました。
初演の時のヤマトタケルは、歌舞伎か否かで税制が揺らぎ、
松竹にとりましては、大きな転換期となりました。

初演の折、「歌舞伎」という認定をいただき、故高円宮殿下が先んじて御覧になり、
そのご推薦で、今の皇太子殿下や当時の中曽根首相がご観劇にみえたことも、
感慨深いものがあります。

法律の規制と言うのは、時代の流れで様々に変わります。
なかでも、消費税導入のおり、かなり緩和され、
若い方たちの抜擢と言うことが、簡単に可能となりました。

それまでは、門閥外の役者にとって、大きな役を与えられると言うことが
少なかったのです。
現在の制度になり、力のある俳優さんが、どんどん進出してこられたことが、
歌舞伎の活性化につながっていることなのでしょう。


話は戻りますが、子役さんの出演時間云々が決定した際、
門之助さんが
「私たちが子供の時なんて、時間なんて関係なかったよね」
と私に仰いました。
「そうですよね」
と私が首肯し、
「でも、この法律は、私たちのような役者の子供には適応されないそうですよ」
と申し上げました。

この後、よく考えますと、今一座している役者の中で、子役を経験している人は
ほかにもおられますが、「役者の子供」として、歌舞伎の子役を経験したのは
門之助さんと、私だけなんですよね・・・


そういえば、一昨年松竹座での「染模様恩愛御書」に出演した際、
染五郎さんからも
「今回のこの公演で、親が歌舞伎役者なのは、私たち二人だけですよね」
と言われ、はたと感慨深いものがありました。

役者の格は違うかもしれませんが、私にとっては大事にしなくてはならない
一因かもしれません。

父の芝居は父ゆえにとの事もあるかもしれませんが、私にとってはあまり好きになれない
所もありました。
しかし、正直父には感謝しなければいけないのでしょうか・・・