第2話:小さな「先にやる」が人生を変え始めた瞬間



翌朝。

健太はいつもより10分早く目を覚ました。目覚まし時計を止めたあと、布団の中で「どうせまた二度寝だろ」と悪魔のささやきが頭に浮かんだが、昨日読んだ本”面倒くさいことを先にやるだけで人生が変わる”の一文が脳裏に蘇った。


「面倒なことほど、先に片付ければ一日が軽くなる」


「よし……まずはこれからだ」

健太は意を決して布団を蹴り飛ばし、起き上がった。



たった5分のゴミ出しが一日の流れを変える



その日、健太が選んだ「最初の面倒」は、台所に溜まっていたゴミ出しだった。

いつもなら仕事帰りに「あぁ、ゴミ出さなきゃ……」とため息をつき、結局夜に放置して翌日に持ち越す。部屋に臭いがこもり、余計に気分が落ち込む――そんな悪循環の象徴だった。


「ゴミ袋を持って玄関を出るだけ。それがなんでこんなに面倒だったんだろう」

わずか5分もかからず終わる作業。それを出勤前に済ませただけで、健太は驚くほど気持ちが軽くなった。


心理学的には、これは「作業興奮(ゼイガルニク効果)」と呼ばれる。小さな行動を完了させると脳内にドーパミンが分泌され、次の行動にも自然と意欲が湧く。健太は無意識のうちに、この効果を体感していたのだ。



職場でも小さな「先にやる」を実践



会社に着いた健太は、机に座るなり報告書の修正依頼に目を通した。

いつもなら「後でまとめてやろう」と後回しにして山積みにする。しかし今日は違った。


「5分で直せるところだけ、今すぐやってしまおう」

そう決めて着手すると、思った以上にスムーズに進み、30分で完了。上司の机に提出すると、予想外の反応が返ってきた。


「お、健太くん。今日は早いね。助かるよ」


その言葉は、久しく耳にしていなかった「肯定的な評価」だった。健太の胸の奥が熱くなる。



「面倒を先にやる」が自己肯定感を育てる



仕事を早めに片付けたおかげで、午後の会議準備も余裕を持って取り組めた。

結果、会議中に自分の発言が採用される場面もあり、「健太がやけに調子いいな」と同僚から冗談交じりに声をかけられた。


たった一日。ほんの小さな行動の積み重ね。

それだけで、健太の自己肯定感は確実に芽を出し始めていた。


「もしかして、本当に俺は変われるのかもしれない」


その夜、健太は缶ビールを開ける前に机に座り、日記をつけた。書いたのは、たった一行。


「面倒なことを先にやったら、一日が軽くなった」


その文字を見つめながら、健太は小さな達成感を噛み締めていた。



面倒は「敵」ではなく「味方」になる



心理学的に言えば、面倒くさいと感じる瞬間は脳が「変化の必要性」を知らせているサインでもある。

健太はそのサインを無視せず、初めて真正面から受け止めた。


ゴミ出し、書類修正、会議準備――些細なことでも「先にやる」ことで、面倒は敵から味方へと変わり始めていた。


そして健太は、この習慣をもっと大きな挑戦に応用していくことになる。