第1話:後回し癖が人生を壊す?32歳サラリーマンの現実と転機
「また締切ギリギリか……」
32歳の会社員・健太は、夜中のパソコン画面を前に深いため息をついた。明日の朝までに提出しなければならない報告書。頭の中では数日前から「早くやらなきゃ」と繰り返していたのに、気がつけばテレビをぼんやり眺め、スマホでSNSをスクロールし、挙げ句の果てにはソファに横になって居眠りまでしていた。
結局、手をつけたのは夜11時を過ぎてから。いつもと同じパターンだ。
「俺って、なんでこうなんだろうな……」
パソコンに向かいながらも、自己嫌悪の言葉が頭をよぎる。
信頼を失う「先送りの習慣」
健太の職場での評価は芳しくなかった。
「健太くんはいつも仕事が遅い」
「もっと計画的にやってくれ」
上司からは何度も同じ言葉を浴び、同僚からも「頼んでも安心できない」と陰口を叩かれていた。信用は確実に失われていた。
プライベートも同じだった。
部屋には脱ぎっぱなしのシャツと積み上がった空き缶。洗濯物は一週間分まとめて山積み。郵便物は開封もされず机の隅に積もっている。健康診断の案内ハガキも放置したまま期限が過ぎ、結局再送の連絡が届いた。
そして何より痛かったのは、交際中の彼女に呆れられたことだった。
「いつも後回しばかり。大事なことをちゃんとやらない人とは将来が見えない」
そう告げられ、距離を置かれてしまった。
後回しは「楽」ではなく「自分を蝕む罠」
健太自身も「このままではいけない」と頭では理解していた。しかし、体は動かない。面倒くさいことを先にやるよりも、目の前の快楽やラクな選択に流されてしまう。
心理学的には、これは「現状維持バイアス」と呼ばれる。人間の脳は、変化や負荷を避けてエネルギーを節約しようとする習性があるのだ。その結果、「やらなきゃ」と思っても動けず、後回しにしてさらに状況を悪化させる――そんな悪循環に陥っていた。
「俺の人生、このまま同じ繰り返しなんだろうか」
暗い部屋で缶ビールを片手に、健太は天井を見つめながら、将来への不安に押しつぶされそうになっていた。
人生を変える一冊との出会い
そんなある日。仕事帰りに何となく立ち寄った駅前の書店で、健太は一冊の本と出会う。
表紙には大きな文字でこう書かれていた。
「面倒くさいことを先にやる人が成功する」
その瞬間、健太の心に電流が走った。
「もしかして……俺がうまくいかない原因って、全部“面倒を後回しにする癖”なんじゃないか?」
本を手に取り、ページをめくる手が止まらなかった。成功者と呼ばれる人たちは皆、「面倒なことを先に片付ける」習慣を大事にしていると書かれていた。
その夜、久しぶりに深酒もせず、健太は本を最後まで読み切った。
読み終えたとき、心の奥底で小さな炎が灯っていた。
「俺も変われるかもしれない。明日からじゃなく、今日からだ」
健太の逆転ストーリーは、ここから静かに動き始める――。