StreamTree | サイコロにもてあそばれる日々

サイコロにもてあそばれる日々

統計学に関連する内容を備忘録代わりに書いていきます。

以前SAMOVAを紹介しました。
SAMOVAは遺伝子の空間分布を調べる手法でした。
こうした手法を景観遺伝学(landscape genetics; Manel 2005)と言います。
景観遺伝学に言及した国内の研究は今のところほとんどありません。(立田ら2008くらい)
立田らはSAMOVAとBarrierというソフトウェアを使って景観遺伝学の解析を行いました。
これらの手法は経緯度を使います。
地点間を動物が直線距離で移動するという暗黙の前提に立った解析手法です。
陸上を自由に移動できればこれらの手法でよいでしょう。
しかし実際には移動を妨げる障害物、例えばがけ等があると、地点間の直線距離のみでは情報が不十分だと考えられます。

近年直線距離でなく、迂回するような条件を考慮できる手法が開発されました。
それがStreamTree (Kalinowski et al 2008)です。
この手法は河川の魚類を念頭に入れて開発されましたが、陸上動物でも適用可能です。
遺伝距離のデータと集団間の経路を入力すると重回帰分析の要領で遺伝距離を補正します。
うまく補正ができたかどうかは決定係数R2値で判断します。
過去の四種類の集団遺伝学研究にこの手法を適用したところR2が0.9程度の高い数値が得られ、この手法は有効であると原典は述べています。