逢いたいのに、逢いたいのに。
逢いたくなくて、仕方がない。
彼が転職してからは、一緒に歩んでいた路が分かれてしまって、
ただでさえ先を行っていたのに、別の路をどんどん進んで行ってしまう。
知らない仕草、知らない話題、知らない登場人物たち。
逢えば逢うほど、もう違う世界の人なんだと見せつけられるようで、逢いたくなくなる。
そのくせ、逢いたい気持ちが湧いてくるのだから仕様が無い。
昨夜の帰り道、ちょうど良いタイミングでLINEが鳴った。
「お疲れーいま帰り」
「お疲れさま。私も帰るとこ」
他愛もないやりとりを繰り返して。
ひと月に数える程しか重ならない出勤日。
逢いたくなくて堪らないのに、逢いたくって堪らない。
さりげなく、でも、勇気を出して聞いてみる。
「今日は真っ直ぐ帰るよね?」
すぐについた既読への返信は
「まっすぐ帰るよ。」
ただ、それだけのことなのに、最近ずっと心を埋めつくしているモヤモヤが溢れて。
家に着いてリビングの灯りをつけたら、涙がどっと溢れて止まらなかった。
それなのに、今夜は?
バスタブに身を沈めたら、肌からまだ、ほんのり彼の匂いが立ち上ってくる。
ただ逢って、
唇を重ねて、
触れて、触れられて、舐めあって、
また唇を重ねて、舌を擦り合わせて、
絡んで、繋がって、溶け合うだけなのに。
もうずっと暗く沈んだ気持ちも、その何もかもが吹き飛んで、3時間でこんなにも満たされてる。
「好き、なの。」
いつも計算して謂う言葉が、自然と零れてしまった。