「いじめは絶対にダメ」

この言葉は、どの学校でも、どの家庭でも、当たり前のように言われている。

誰だってそんなのダメだと分かっているのに、それでもいじめは昔から存在し続けている。

 

なぜ、人は「いけない」と分かっているはずの行動をしてしまうのか。

 

なぜ、いじめはなくならないのか

理由は単純ではもちろんない。

心理・社会・脳科学の観点が絡み合っているとのこと。

 

まず、人間は集団をつくる動物であり、そこには必ず「力関係」や「空気」が生まれまる。

これは悪意というより“生物学的な仕組み”。

 

強い者に従う・多数派に合わせる・少数派が浮きやすいなど、こういった構造はどの時代にも存在してきた。

だから、誰かが浮くと「標的」が生まれやすくなる。

 

また、人間関係・勉強・部活・家庭環境など、子どもは目に見えにくいストレスを多く抱えている。

 

行き場のない感情は、弱い立場の子へ向かいやすい。

これは大人でも同じはず。

 

そしていじめは実行犯だけでは成立しない。

**周囲の沈黙が“いじめを成立させる装置”**になっている。

 

逆らうと自分が標的になるかも・面倒に巻き込まれたくない・空気を乱したくないなど、こうした心理によって、いじめは「広がる」のではなく「放置される」。

 

SNS、LINE、ゲーム内のチャット。この情報技術の発展も見逃せない。

昔よりもいじめの舞台は複雑で、24時間続くことがある。

「家に帰れば安全」という時代ではなくなった。

 

では、なぜ“道徳的な言葉”は子どもの心に届きにくいのか。

 

人は、“自分が損をするか・得をするか”、“自分の大切な人が影響を受けるか”などそうしたリアルを感じたときに初めて行動を変える。

 

「いじめは悪いこと」

これは真実だが、その言葉だけでは感情が動かない。

 

そしていじめると、ストレスが減る、その場だけ優位に立てる、仲間から認められるように感じるなど“即時的な快感”があるため、道徳が負けてしまうことがある。

 

「正しさ」だけでは抑えきれないのだ。

 

子どもにはいじめについてどう伝えればいいのか。

ここが最も重要なポイント。

 

“いじめはダメ”という抽象論ではなく、子どもの感情に響く現実”を伝える必要がある。

 

いじめは「性格の問題」ではなく行動の癖。

 

癖は、友人関係・恋愛・部活・社会人生活・結婚生活などすべてに持ち越される。

 

いじめる人は、大人になってから高確率で以下のようになりやすいらしい。

★信頼を得られない

★深い友人関係を築けない

★職場で孤立しやすい

★“人間関係の失敗”を繰り返す

 

逆にいじめない人は、人生で一番大切な「信頼資本」を手に入れる。

 

「いじめは、必ず将来の人間関係で“自分に返ってくる”。自分の人生の質を下げる行為なんだよ」

この視点であれば、子どもにも響きやすいはず。

 

声掛けとして、よくある声掛けは「いじめられたらどんな気持ちになる?」

 

しかし、加害側は想像がうまくできず、響きにくいのが現実。

もっと効果的なのは、「あなたの大切な人がいじめられたら、あなたはどうする?」

 

「自分ではなく、大切な人」に置き換えることで、子どもの心は動きやすい。

 

そしていじめの反対は“優しさ”ではない。

いじめの反対は 「勇気」 だ。

★一声かける

★先生に伝える

★無視せずに話しかける

★たった一言「やめなよ」と言う

などなど。

 

一人の勇気は、クラスの空気を必ず変えるはず。

 

子どもに伝えたいのは、「正義のヒーローになれ」ということではなく、“目の前の1人を救う小さな勇気”を持てる人は、人生のどこでも強く生きられる、ということ。

 

いじめは簡単にはなくならない。

しかし、「いじめをしない子」「勇気を出せる子」を確実に増やすことはできる。

 

そのためには、大人が「いじめは悪いからダメ」ではなく、“人生にとって意味のある言葉”を伝えることが欠かせない。