日本はすでに“大学全入時代”。
18歳人口は減り続け、大学の定員はほぼ満たされ、「大学に入りたければ基本的に入れる」という状況。
ではこの先、大学はどんな変化を迎えるのか?
Fラン大学は消滅するのか?大学の価値はどうなるのか?
教育の大きな転換点に立つ今こそ、冷静に未来を考える必要がある。
18歳人口はピークの205万人(1992年)から現在は約110万人台へ半減している。
しかし大学の数はほぼ横ばい。
つまり、大学の数>入学希望者の数、という歪な構造が生まれている。
この結果、地方私立大学の定員割れ、補助金に頼る運営、志願者の首都圏・関西圏への二極化などが加速している。
“Fラン大学は消滅するのか”という問いがよく言われる。
結論から言えば、多くの大学は淘汰されるが、完全消滅とは限らないというのが現実的。
理由は3つ。
① 大学法人の統合が進む
完全な廃校よりも、「系列大学との合併」で生き延びるパターンが増える。
★学部・学科の統合
★教職員の共同運営
★ネット大学との併設
大学は“学校法人”という社会的な箱である以上、自治体の事情も絡み、急に消えることは難しい。
② 地方自治体による“延命措置”が行われる
地方大学は地域にとって「学生=人口流入・経済効果」をもたらす存在。
そのため自治体は、補助金・寄附金・公共連携などを通じて大学を守ろうとするはず。
廃校にするより、生かしたほうが地域として得だから。
③ 役割の再定義により“専門学校化”する大学も増える
大学の名は残しつつも、実態は専門学校のような実務教育に寄せる大学が増加すると思われる。
★デジタル・AIスキル
★観光・ホスピタリティ
★介護・地域福祉
★エンタメ・スポーツ
今後は「学位を授与する専門学校」のような存在が増えるはず。
次に、大学への補助金はどこへ向かうのか?
ここが非常に重要なポイント。
① 国の方針は“選択と集中”へ確実に向かう
政府は今後、「伸びる大学」にはより手厚く、「厳しい大学」にはより厳しくという補助金配分を進める可能性が高い。
理由:
★限られた税金を効率よく使う必要がある
★研究力の世界ランキング低下を止めたい
★産業界と連携してイノベーションを生みたい
特に重点配分が増えそうなのは理工系・AI・医療・再生エネルギー関連の大学。
② 地方の小規模大学は補助金だけでは持たない時代へ
学生数が減ると、補助金だけでは収支が合わなくなる。
そのため大学側は、通信制(オンライン)拡大、留学生の積極受け入れ、社会人のリカレント教育など、収益構造の多角化が不可避になる。
では今後、大学の“価値”は今後どう変わるのか。
AIの発展もあり、「大学で学んだ知識が社会で使える」という構造が崩れつつある。
そのため企業は課題解決力、コミュニケーション力、学び続ける力をより重視する傾向が強まるはず。
大学が今後提供すべき価値は変わる。
★企業との共同プロジェクト
★地域との社会課題解決
★他大学や海外大学とのネットワーク
★起業支援・研究インキュベーション
などなど。
つまり、大学は「知識を教える場所」ではなく「学びの場とネットワークを提供するプラットフォーム」へ進化していく。
このような時代になっていくると、“大学は行く価値があるのか?”という問いが常態化するはず。
親世代の価値観(大学=安定)は薄れ、今の子どもたちは“大学は目的ではなく手段”
として捉えるようになる。
なぜ大学に行くのか、何を学びたいのか、行くことで何を得られるのかなど、こういった問いに答える大学だけが生き残っていく可能性が高い。
子どもたちには「偏差値」よりも「学びの中身」に目を向けてほしい時代となっていく。
実践的な学びがあるか、企業との連携が充実しているか、自分が何をしたいか明確にできるか、大学が“社会への橋渡し”をしてくれるかなど、こうした視点で大学を見ることで、
「行ってよかった大学」との出会いが確実に変わる。
大学全入時代は教育危機のように見えるが、見方を変えれば 大学が進化するチャンス でもある。
これからの大学は、社会とつながる、経験を提供する、課題解決人材を育てる、一生の学びを支援するという“新しい価値”を求められる。
子どもたちもまた、「大学にただ行く時代」から「大学を選び、自分の未来を設計する時代」 へと変わろうとしていくと思われる。
