「多様性が大事だよ」
学校でも社会でも、最近ではよく聞かれる言葉。
しかし、いざ子どもに「多様性ってなに?」と聞かれると、説明は意外と難しい。
そもそも「多様性」とは何か。
多様性(ダイバーシティ)とは一言でいうと、「違いがあること」そのものを価値として受け入れる考え方のこと。
人間の“違い”は無数にある。
性格・考え方・見た目・感性・家庭環境・得意・不得意・国籍・文化・生き方・価値観などなど。
多様性とは、ただ“違う人がいる”という事実を認めるだけでなく、「違うからこそ社会はうまく回っている」という視点を持つこと。
続いて多様性が重要な理由について。
多様性は流行語ではない。
現代社会では“生き抜くための前提条件”になりつつある。
同じ考えの人ばかりだと、集団はあっという間に脆くなる。
★同じミスに気づけない
★同じ方向に偏ってしまう
★誤解が広がっても誰も止められない
一方、多様な視点や経験がある集団は、
★ミスに気づく人が増える
★新しい発想が生まれる
★トラブルに強くなる
という“変化に強い集団”になる。
これは、自然界の生物多様性と同じ原理。
そして、イノベーション(新しい価値)は“違い”から生まれる。
Google、Apple、Metaなど、世界のトップ企業は多様性を最も重視している。
なぜなら、違う考えを持つ人同士が集まることで、新しい発想が生まれるから。
同じ背景・同じ価値観の人だけでは、新しいアイデアは生まれにくい。
多様性は、「生き方」が多様化する現代には必須のもの。
進学ルート、働き方、家族の形、趣味、価値観など、現代は“正解が一つではない”時代。
多様性を理解できないと、自分と違う人を攻撃しやすい、間違いを認められない、他人の価値観にイライラしやすいという生きづらさにつながる。
多様性を理解すること=自分の生き方を楽にすることでもある。
次に、多様性のメリット・デメリットについて。
メリット
★創造性が高まる
★他者理解が進み、人間関係が豊かになる
★いじめや偏見が減りやすい
★問題解決力が高い集団になる
★自己肯定感が上がる(“違っていいんだ”と思える)
デメリット
★価値観が違う者同士で衝突が起きやすい
★話し合いに時間がかかる
★気が合わない相手と協働しなければならないことが増える
などなど。
つまり多様性は、“楽ではないけど、社会が前に進むために必要な仕組み”。
では、子どもにどう多様性の重要性を伝えればよいか?
「みんな違ってみんないい」。
この言葉は素敵だが、抽象的すぎて理解が難しいもの。
以下で子どもに響く伝え方を3つ紹介する。
【伝え方①】「違いがあるから、社会は動いている」
子どもには「役割」の例が非常に分かりやすい。
パティシエ・大工・看護師・プログラマー・教師・農家・消防士・ミュージシャンなど、
どれが欠けても社会は成立しない。
「みんな同じ人間」では社会は回らない。
→違いは不便ではなく、社会を動かすエンジン。
この視点は、子どもに強く響くはず。
【伝え方②】「違い=その人の“ストーリー”」
人は、過去の経験・家庭環境・努力によって価値観が形づくられている。
勉強が苦手な子・すぐ泣いてしまう子・意見をはっきり言える子・内気で静かな子・空気を読むのが苦手な子・誰とでも仲良くなれる子などなど。
すべてその子のストーリーの一部。
「違い=間違いではなく、その人が歩いてきた道の形なんだよ。」
子どもは“ストーリー”として理解すると、他人を受け入れやすくなる。
【伝え方③】「多様性は、自分を楽にする考え方」
子どもが最も理解しやすいのは、“自分ごとにする”伝え方。
みんなと同じじゃなくていい・得意・不得意があって当然・苦手なことがあっても、それは才能の裏返し・完璧に合わせなくていいなどなど。
多様性は他人のためだけの考えではない。
「自分の“らしさ”を守るための考え方」と伝えることが大切。
多様性とは「優しくしよう」という道徳の話ではない。
社会を強くする力であり、イノベーションの源であり、自分を生きやすくする考え方であり、未来をつくるための基盤。
だからこそ、子どもには「違う=悪い」ではなく「違う=価値」という視点を持ってほしい。
その視点が、子ども自身の人生を大きく支えるはず。
