山靴を履いたお巡りさん 岐阜県警察山岳警備隊/編 山と渓谷社 1992年5月15日 第1刷発行

河内図書館所蔵(当時は河内町立図書館)

 

山岳警備隊隊員による手記をまとめたもの。

 

岐阜県では、方面ごとに方面隊が組まれている。
飛騨方面隊(神岡、萩原、高山、古川の4警察署)

 

多いときは同時多発的に遭難事件が複数発生、水死遺体を危うく別な遺族に引き渡しそうになったことも(DNA検査が普及する前なので、指紋照合)。

 

槍ヶ岳や穂高は有名なためか、初心者レベルの登山者がクサリ場やハシゴ場の通過を余儀なくされるとか、本来は最後尾を進むはずのリーダーはどんどん進んで、初心者が最後になるパーティも。

 

転落者の遺体収容時(転落者のパーティ仲間が引き上げ)に付き添った警備隊員が雪渓から転落し、瀕死の重傷を負い、病院まで運ばれたが手の施しようがなく殉職した。

 

転落を目撃した他の登山者が長野県警備隊基地へ連絡→そこから山荘を経由して現場で別な転落者の収容作業を終えた警備隊員に連絡が入ったあとに、転落者が滑り降りてきた。すぐさまヘリ搬送されたが約1週間後に息を引き取った。

 

あるファミリー登山では、みな軽装の上に、父親は背広姿で革靴という出で立ちの登山で、足を痛めているのに「今日中に下山する」と強引に小屋をあとにしたが、他の登山者からみても満足に歩ける状態ではなかった。それでも強引に降りていくので山岳警備隊に引き継いで、希望通り下山し事情聴取の結果、医師だと自白したという(登山中は「自称・会社員」としていた)。

 

警備隊の話だけでなく、山小屋主人の手記も載っている

 

山小屋の管理人が、下山中に体調不良(十二指腸潰瘍)で動けなくなり、警備隊など総出で人力で輸送したこと。その人の飼い犬を小屋付近で放し飼いにしたら登山者について行って新穂高の登山指導センターまで下山して警察に保護された(首輪に飼い主の名前があったので飼い主判明)ことなど。

 

山岳警備隊が編成される前は、山小屋で多めに従業員を雇い、民間救助隊を兼ねていたが、救助隊員の高齢化もあり、警察の山岳警備隊が期待された。

 

少し前に出た本なので、見慣れない用語もチラホラ

シュルント・・・氷河または雪渓と山腹との間にできたすきま

キスリング・・・昔のザック