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図1を見てください。札幌から東京までの距離 L は800kmぐらいです。光ファイバの損失 α を0.2dB/kmだとしますと、一個の光子を札幌から東京まで送るときの成功確率は10^(-16)です。つまり、平均的に10^16回繰り返せば一回成功するというきわめて小さい成功確率です。もつれ配送を考える場合では、まずは札幌側でもつれ光子対を用意して、片方の光子の量子状態を量子メモリに入れて、もう片方の光子を東京側に送ります。現在の技術レベルでは、一秒間に10^10回(つまり、10GHz)この操作を繰り返すことができます。これでも、11日に1回成功する程度です。待つのはつらいかもしれません。

図2のように伝送路を四つの区間に分けて、L/4の距離でもつれ配送を行う場合について考えましょう。青森、秋田、仙台をノード(node)と呼びます。要は、量子中継器を置く場所です。こうなると、例えば札幌-青森間の成功確率は10^(-4)ぐらいです。四つの区間は並列でもつれ配送を行っていいので、成功するまでに必要な時間はかなり短くなります。ただし、各ノードに光子の量子状態を記憶する量子メモリが必要です。量子メモリがないと、同時に全ての区間においてもつれ配送が成功しないといけないため、結局成功確率は10^(-16)のままで、分ける意味がないのです。

伝送路を分ける場合と分けない場合を比較するために、「リソース」、つまり、資源をどう定義するかが重要です。1998年にこのもつれ配送の概念を提案した物理学者たちは、使ったもつれ対の総数をリソースと定義しました。これが最小になるように各区間の距離を最適化できると主張しました。伝送路を分ける場合に必要なリソースの量はN Exp(α L/N)で、分けない場合にはExp(α L)ですから、以下の不等式を満たさいと分ける意味がないと言えます。

N Exp(α L/N) < Exp(α L)

さらに、左側を最小にしたいわけです。左側を最小にするための条件は N = α L です。このとき、各区間の距離はL/N = 1/αであることがわかります。つまり、光ファイバの損失で決まるということです。これはおおよそ20kmです。まとめて言うと、使うもつれ対の総数を最小に抑えるためには、ノード間距離を20kmにする必要があります。これは、札幌-東京間に40ノードを設けることになります。

文献[1] The Physics of Quantum Information, Bouwmeester et al. (Eds.) (Springer 2000) p.288-289