前回では、量子中継器の研究の現状について少し話しました。プロトコルや実験など、最先端の話題を紹介する前に、量子中継器の重要性を説明します。
量子情報の研究のひとつの大きな目的は、「量子コンピュータ」を作ることです。量子コンピュータとは、外部から制御できる多次元量子システムのことです。このような量子システムを計算に使うことができれば、ある種の問題を解くのに、古典コンピュータに比べて計算ステップが少なくて済むことが知られています。しかし、量子コンピュータを作ることは非常に難しいです。外部環境による擾乱で量子情報が壊れるため、量子相互作用を外部から制御すると同時に、量子系を外部環境から遮断する必要があります。これはなかなか大変で、大きな量子コンピュータを作るときのボットルネックになっています。量子誤り訂正符号などが提案されていますが、とんでもない数の補助量子を使うため、実現はまだ遠い話です。
小さな量子コンピュータなら、わりとできそうなので、たくさんの小さな量子コンピュータをつないで一つの「量子ネットワーク」を作ることが考えられます。この量子ネットワーク全体は一つの大きな「分散量子コンピュータ」だと思って、大規模な量子計算を実行することが可能です。この場合では、量子情報のやりとりが必要になります。量子情報のやりとりができないと、個々の量子コンピュータが独立になってしまい、大規模な量子計算はできなくなります。
量子情報のやりとりは、「量子テレポーテーション」と呼ばれるプロトコルで実現できます。しかし、このプロトコルを実行するために、量子コンピュータ同士は「量子もつれ」を共有しなければなりません。現在、量子もつれは量子情報処理のための「リソース」(資源)だとされています。量子テレポーテーションもこのリソースを消費します。量子もつれを局所操作と古典通信で作ることができないので、どこかで生成してから、量子コンピュータに配る必要があります。
量子もつれを光子に載せて、光ファイバを通して、量子コンピュータに送る方法が考えられますが、光ファイバの損失で長距離伝送は無理だと考えられています。光ファイバの損失は0.2dB/kmなので、15kmの光ファイバで光の強度が半分(3dB)に落ちる程度です。100kmなら損失は20dBで、1000kmなら損失は200dBです。200dBは大変です。簡単に計算するとわかりますが、現在の技術レベルでは、10GHzで送っても、光子一個を1000km飛ばすには、何百年もかかってしまいます。
光子を「増幅」することもできません。「量子複製不可能定理」があります。要は、量子状態を複製(増幅)するときに、量子情報が破壊されるのことです。ですから、量子情報を光子に載せて送る場合では、増幅が許されないわけで、光ファイバの損失でやられてしまいます。
「光ファイバの損失でやられない」量子情報の伝送技術として、「量子中継器」が提案されたのです。その考え方が巧妙で、斬新であると言えます。以上に述べたような背景があって、量子中継器が量子ネットワークを実現するために欠かせない技術であることがわかります。量子中継器ができたら、量子ネットワークも可能になり、大規模な量子計算の実現も近くなることが予想されます。量子中継器のことについては今度の記事で紹介します。
量子情報の研究のひとつの大きな目的は、「量子コンピュータ」を作ることです。量子コンピュータとは、外部から制御できる多次元量子システムのことです。このような量子システムを計算に使うことができれば、ある種の問題を解くのに、古典コンピュータに比べて計算ステップが少なくて済むことが知られています。しかし、量子コンピュータを作ることは非常に難しいです。外部環境による擾乱で量子情報が壊れるため、量子相互作用を外部から制御すると同時に、量子系を外部環境から遮断する必要があります。これはなかなか大変で、大きな量子コンピュータを作るときのボットルネックになっています。量子誤り訂正符号などが提案されていますが、とんでもない数の補助量子を使うため、実現はまだ遠い話です。
小さな量子コンピュータなら、わりとできそうなので、たくさんの小さな量子コンピュータをつないで一つの「量子ネットワーク」を作ることが考えられます。この量子ネットワーク全体は一つの大きな「分散量子コンピュータ」だと思って、大規模な量子計算を実行することが可能です。この場合では、量子情報のやりとりが必要になります。量子情報のやりとりができないと、個々の量子コンピュータが独立になってしまい、大規模な量子計算はできなくなります。
量子情報のやりとりは、「量子テレポーテーション」と呼ばれるプロトコルで実現できます。しかし、このプロトコルを実行するために、量子コンピュータ同士は「量子もつれ」を共有しなければなりません。現在、量子もつれは量子情報処理のための「リソース」(資源)だとされています。量子テレポーテーションもこのリソースを消費します。量子もつれを局所操作と古典通信で作ることができないので、どこかで生成してから、量子コンピュータに配る必要があります。
量子もつれを光子に載せて、光ファイバを通して、量子コンピュータに送る方法が考えられますが、光ファイバの損失で長距離伝送は無理だと考えられています。光ファイバの損失は0.2dB/kmなので、15kmの光ファイバで光の強度が半分(3dB)に落ちる程度です。100kmなら損失は20dBで、1000kmなら損失は200dBです。200dBは大変です。簡単に計算するとわかりますが、現在の技術レベルでは、10GHzで送っても、光子一個を1000km飛ばすには、何百年もかかってしまいます。
光子を「増幅」することもできません。「量子複製不可能定理」があります。要は、量子状態を複製(増幅)するときに、量子情報が破壊されるのことです。ですから、量子情報を光子に載せて送る場合では、増幅が許されないわけで、光ファイバの損失でやられてしまいます。
「光ファイバの損失でやられない」量子情報の伝送技術として、「量子中継器」が提案されたのです。その考え方が巧妙で、斬新であると言えます。以上に述べたような背景があって、量子中継器が量子ネットワークを実現するために欠かせない技術であることがわかります。量子中継器ができたら、量子ネットワークも可能になり、大規模な量子計算の実現も近くなることが予想されます。量子中継器のことについては今度の記事で紹介します。